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Author Interview

インタビュアー:[雀部]

『物語工学論』
> 新城カズマ著/加藤アカツキカバーイラスト
> ISBN-13: 978-4046214829
> 角川学芸出版
> 1500円(文庫版・電子版もあり)
> 2009.8.10発行
 小説をきちんと書き終えることができない。キャラクターや設定を物語にまとめることができない。そんなクリエイター志望者に「物語とは何なのか」「物語を作り終えるにはどう思考したらいいのか」を実例を交えて解き明かします。
 古今東西の物語に登場する人物を題材に「キャラクターの類型」を分析。
 いかなるルーツを持ち、それが変遷を経て現在の類型に集約されていったのかを物語論的視点から解説。キャラクター作成用のチャートや、参考作品リストを掲載。
 大ヒットライトノベル作家である賀東招二氏と著者の対談も収録。小説執筆のリアルな悩みや創作方法に迫ります。

『マルジナリアの妙薬』
> 新城カズマ著
> ISBN-13: 978-4152091468
> 早川書房
> 1500円
> 2010.7.20発行
 活字と電子の狭間で物語のあり方が大きく変容しつつある現在。
 その最前線で思考を深める著者が、物語的想像力の可能性を問い直すショートショート全12話。

『tokyo404』
> 新城カズマ著/仲村弥生表紙モデル/深野未季撮影
> ISBN-13: 978-4163820309
> 文藝春秋
> 1300円
> 2013.3.20発行
 東京・佃島に400年住み着いている多和田家の娘・笑子は、大学入学をきっかけに一人暮らしを計画。大学近くの洋館「メゾン・ポテ」でルームシェアをすることに。
 ところがこのお屋敷、改築と増築で中は迷宮状態な上、住んでいる住人たちもなにやら奇妙奇天烈で…。
 一方、小説家の新城カズマ氏は家出少女たちの相互扶助組織「家出少女連盟」なる組織の噂を聞き込み、その正体を探るべく取材を進めるのだった―。
 SF・ライトノベルのカリスマが贈る、都市をさすらう非定住者たちのサーガ。

『さよなら、ジンジャー・エンジェル』
> 新城カズマ著/坂本ヒメミカバーイラスト
> ISBN-13: 978-4575515947
> 双葉文庫
> 648円
> 2013.7.14発行
 書店でアルバイトをする継美は、本と妄想することが好きな大学生。
 書店で見かけたメガネの美青年に惹かれデートをするが、その最中に美青年は消える。馬橋南署巡査の司郎は継美が気になっていた。遠くから眺めるうち、彼女がストーカー被害に遭っているのではと助けようとするが、さまざまな「ルール」で思うようにならないのだった。実は、司郎は幽霊だったのだ…。
 ミステリー×ファンタジー×ラブストーリーの三重奏で描くハートウォーミングな物語。

『未来力養成教室』
> 日本SF作家クラブ編/YOUCHANカバーイラスト
> ISBN-13: 978-4005007509
> 岩波ジュニア新書
> 780円
> 2013.7.19発行
 使い方を間違えれば、誤解を生んだり相手を傷つけることもあるけれど、うまく鍛えれば、冒険の後押しをしてくれたり、不幸を防いだり、夢を実現する力を与えてくれる――、 そんな「想像力」を使いこなし、自分の未来を切りひらく秘訣とは? 日々想像力を駆使する9人の人気SF作家が、それぞれの10代を振り返りながら語ります。

『ドラゴン株式会社』(21世紀空想科学小説 9)
> 新城カズマ作/アントンシク絵
> ISBN-13: 978-4265075096
> 岩崎書店
> 1500円
> 2013.12.31発行
 はじまりは、ぼくに届けられたひとつの種だった。ぼくは、「とりあえず、せつめい書のとおりに」うめてみた。ただそれだけだ。五十五秒めには、種が大きくなっていた。三分がすぎるころには、ほそながい、青い芽がはえてきた。そして、ぼくの目のまえでぐんぐん育っていたのは、それはもうだれがどう見ても、一匹のドラゴンのあかちゃんだったんだ!
 しかも、この物語の結末を決めるのは、読者のきみだ!

雀部> 21世紀空想科学小説シリーズ、今月の著者インタビューは昨年末に『ドラゴン株式会社』を出された新城カズマ先生です。
 新城先生お久しぶりです。前回の『サマー/タイム/トラベラー』インタビューから、もう9年経つんですね。今回もよろしくお願いします。
新城> や、すっかり御無沙汰してて申し訳ないです、こちらこそよろしくお願いします。
雀部 > この21世紀空想科学小説シリーズは、各作家の方々がそれぞれの個性を発揮されていて、いろんな趣向の作品が読めるのも特徴だと思うのですが、『ドラゴン株式会社』が方向性としては一番の変化球のような気がしました。
 SFの面白さには色々な側面がありますが、この本は、読んだ子供たちに自分の頭で考えることの重要性を思いつかせ、その過程を通してあれこれ想像を膨らませる楽しさを教えているような気がしました。
新城 > ありがとうございます^^;>変化球。
 企画にお誘いいただいた際に先ず思ったのは「ここは変化球投げる展開だよな…」だったものですから。
 他の皆様は、きっとあんな凄いのやらこんな面白いのやらを書かれるに違いあるまい、となれば不肖新城としてはできるだけ誰もやらなさそうなことを仕掛けたいなあ…と。幸い、ネタも仕掛けもかぶらなかったようなので一安心で。(ただ、刊行してから読者の方から御指摘いただいたのですが、タイトルが別メディアの既存作品にかぶってたのは、まあ何と言いますか…^^;;;)
 初めての小中学生向け小説だったのでいろいろ四苦八苦七転八倒したのですが、「子どもを子ども扱いしない」「のちのち思い出して気がついたり読みなおしてビックリするような話にしたい」という普段の自分の信条からすれば、なんとか及第点は取れたかなと思っております。
東野 > いやあ、新城さんは最初依頼にとても快く応じてくださったので、うれしかったのですが。そのあと、ご連絡がなかなかとれなくて……。いつあがるのか、編集者共々どきどきしておりました(笑)。
新城 > うわあ東野先生が突如。その節はお手数おかけしました、本当にもうしわけありません… (←ツイッタ上で原稿催促されたスチャラカ小説家)
雀部 > あ、東野さんから、絵に描いたような突っ込みが(笑)
 しかし、“ドラゴン株式会社”って、マンガにもあるうえに、実在の会社が二つもあるんですね。ほんとに、なんとまあですね(笑)
 もし小学校の授業で『ドラゴン株式会社』を使うとしたら、最初の勘所は、特別授業で“ドラゴンを使う会社”を考えるところですね。自分だけのドラゴンというだけでも魅力的なのに、一緒に働くなんて想像するだけでもワクワクすると思います。しかも、このドラゴンを使うお金儲けが、ラストへの伏線になっているという。
新城 > そうなんですよね。やはりSFですから、何かがやってきて現実社会のほうがグニャグニャ変形してしまうところは書きたいなあと思いまして。それこそ学校の授業で「ぼくのかんがえたさいきょうのドラゴンかいしゃ」とか考えるというのは、すごい面白いと思います。とはいえラストも…お、どこからともなく噂の白いフォントが窓の外に、窓の外に!
雀部 > (ということで、以下かなりネタバレなので白いフォントで……)
 ドラゴンの出自とかエネルギー保存の法則(笑)とか色々明らかにされてないんで、選んだラストからそれを考えさせるのも良いような。
 商売している家の子供だったら、後で法外な料金を吹っかけられて人類が破産するんではないかと思いついたり。
 神様とかに興味がある子供だったら、神様が人類を試すためにドラゴンを送り込んだとか。反対に、実はドラゴンは地獄の亡者の生まれ変わりで、現世で善行を積むために送り込まれたので、こき使われる=徳をつむこととになるので、使い倒しても良かったり(笑) 私が教師だったらぜひ教材に使いたいです。
新城 > あそこで話が保存則のほうへと傾いてゆくのが、いかにもSFだなあと自分で書いておいて思うわけですが。そこをすっとばすと、たぶんこの話は直球の冒険ファンタジーになるだろうし、あるいは別の法則が(暗に)支配する異世界へと渡ってゆくこともできたでしょうね。
 近ごろ思うのは、SFは「可能性の文学」でありながらも(やはり近代西洋科学の影響も大なので)どこかで「根拠を求め(続け)る物語」なのだなあ、ということで。だからこそ、なんだかんだで話が大きくなりがちで、するりと「神とは?」「宇宙とは?」みたいなところに到達できてしまうのかもしれませんが。
 ラストにしても、大人はもちろん子供の読者でも、何について喩えているのかはバレバレなので…千差万別の「選択」がありえるとは思います。
雀部 > う〜ん、そんなにバレバレなんですか。d-エネルギーは、ちょっと原子力発電のことなのかとは考えたんですけど、ドラゴンのうろこのd-コンは、量子コンピュータのことかと考えると、やはり平行世界の話なのかと……
新城 > まあ、なにはともあれ例の311の後に書いたお話ですから。今から数十年後に誰かが読んで「へ〜あのころはこんなことを心配してたんだ〜」と思ってもらえたらば、それも一興かと。
 ちなみに量子コンピューティングといえば、昨今話題の量子アニーリングが面白いですよね。グーグルが大枚はたいて買ったというのでずっと追っかけてたんですが。もう未来は(まだら模様に)到来してますよ、ほんと。

 お、そろそろ白いフォントの霧が晴れてきた。
 いま触れた「数十年後」には、もう小説を書いてるのは機械ばっかりになってるんじゃないかと思ってます。もしかしたら(円城塔さんもたびたび指摘しているように)小説を読むのも機械ばっかり…かも。
雀部 > レムも書いてましたよね。AIが書いた小説をAIが読むやつ。
 しかし、人情の機微がわかる機械って、既に人間と呼べるのではないかと(笑)
新城 > まさにそこなんですよね…じつは数年前に開始して現在も(遅れに遅れつつ)書こうとしてる新城のSFシリーズ〈あたらしいもの〉も、そのへんのことを追いかけたくて思いついたもので。すみません、もうしばらくお待ちください>関係各者様&読者の皆様。技術発展というよりは法律改正(もしくは法体系の刷新)が21世紀の大波だと常々思ってるんですが、たぶん50年後には「ヒト」の定義も「所有」の観念も現在とは様変わりしてると思います。あるいは(というか当然ながら)「物語」の定義も。
雀部 > 新しいSFシリーズ楽しみです。50年後の未来かぁ、冷凍冬眠出来ないかな(汗;)
 そう言えば「IT'S FULL OF FUTURES...」(『未来力養成教室』所載)でも、ぴったり50年後にこのページに目を通して欲しいと書かれてますね。ドラゴンは別として、果たして50年後に何がやってくるのであろうか?(笑)
新城 > 「人間以上」の何者かが、あるいは「人間以下」となってしまった我々の子孫が…ああ、窓の外に、窓の外に!
雀部 > 「人間以上」や「人間以下」の人類子孫は、中国あたりから最初に出てきそうで怖い(笑)
新城 > ちなみに「何かがやってくる」パターンは、SFの中だけに限っても、既にいくつもの「その後の展開」の王道が開拓されてるんですよね。星新一、藤子不二雄、フレドリック・ブラウン[以上敬称略]あたりから始まって…拙作もその意味では(王道の一つである)ばっくれオチに分類できないこともない。
 その意味では、ぜひとも若い読者の皆さんに試みていただきたいのは、
「あなただったら後半をどういうふうなお話にしますか?」
ですね。もしかしたら、そこから次代のSFを担う新たな才能が…。
雀部 > “私がSFを書くようになったきっかけは、『ドラゴン株式会社』を読んだからなんですよ”とか、新たなエネルギー源を開発したノーベル賞受賞者が“『ドラゴン株式会社』を読んで思いつきました”なんて最高ですよね!
新城 > それはSF作家の夢のひとつですよね……じぶんのつたない妄想が現実の社会を確実に変えてしまう、というのは。新たな(そしてより安全で便利な)エネルギー源……これも今まで以上に求められているので、ほんとに今の子供たち・若者たちには「よろしくガンバッテくだされ! 人類の未来は君たちにかかっておりますぞ!」と、応援というよりも祈りにも似た気持ちを日々捧げております。
 一社会人としては、小規模な熱電発電とか材料工学方面での地道な進展に期待してるんですが……スチャラカSF作家としては、やっぱ軌道エレベータをド〜ンとぶっ建てて大気圏外で太陽光発電したやつを「有線でひっぱってくる」とか、太平洋全域にズバ〜ンとパイプ群をぶちこんで海洋温度差発電するとか、そーゆーアレをナニしてほしいなあと。
雀部 > そーゆーアレは、日本人が開発してほしいなあ。
 軌道エレベータ、私も見てみたい。落ちてきたら大変だけど(爆)
 そういえば、前回のインタビューの後、すぐ出た『物語工学論』、面白かったです。冒頭の“さまよえる跛行者”のところから引き込まれました。これは物語を解体し分析することによって、システマティックに物語を生み出す方法について言及した本だと思いました。ということは、この方法を突き詰めていくと、AIによって書かれた小説がベストセラーになることも可能だということですよね。
新城 > あの本の腑分けでいくのか、あるいはもっと別のうまい方法がこれから広まるのか…いずれにしてもAIだかクラウドだかビッグデータだかで「世界人類の半数を泣かせる、いい話」くらいは数年以内に可能だと思います。文章表現の細部とかは、人間が下請けで修正してもいいわけですし。
 あるいはそれよりも先に、生身の読者のほうが「ちょっと機械っぽいガタピシャな話だけど、これで暇もつぶせるし、無料だし、まあいいか」と慣れてしまって、通勤時間はそれを愉しむ…という、機械の性能向上と読者の期待感降下がどこかで合致して「手打ち」がなされるかも。
雀部 > 新城先生には、『物語工学論』の方法に沿って書かれた本があるのでしょうか?
新城 > おお、そこに来ましたか^^;…じつはあの本を出してから、幾人かの方に同じ質問をされたのですが…答はYESでもありNOでもあるんです。
 というのは、『物語工学論』に書かれてる内容は、ふだん新城自身が頭の中でお話を創ってる過程を「いったいどうして自分はこんなことを/こんな手順でやっているんだろう?」「なぜ自分はお話を創りたがるんだろう?」と自己分析していった結果なのですね。新城の普段の思考パターンを、できるだけ少ない前提と表現であらわしてみたら、あの七つの類型とエッセイめいた「理論篇」が抽出されたわけで。いわば自己リバース・エンジニアリングみたいなものなのです。
 なので、もしも誰かが「小説を書こうと四苦八苦してる新城の脳味噌」を外から覗き見して分類して抽出したとしたら…あるいはこれまで新城の書いた小説をぜんぶ分解して圧縮したら…たぶんあの本と似たような入門書がもう一冊できあがるとは思います。
 ですが、小説の依頼を受けて企画メモをまとめて執筆を開始した新城が、意識的・自覚的に「よし今回は〈塔の中の姫君〉を2人出すぞ!」とか設計するわけではないのですね。実際にお話を思いつく時は「ひさしぶりにかわいい女の子書きたいな」「こういうセリフでラストを〆たらカッコいいな」「大好きなあの名作のオマージュやろうかな」「今回は40枚で短篇まとめなくちゃ」みたいな小さな個人的欲求から始まって、あとは四苦八苦と資料調査が延々続く、という。
 なので、結果的にはあの本に書かれたとおりの方法を使っているとも言えるし、しかし当人の意識のうえではまったく使ってないとも言えるし…。
 うーむ答えになってるでしょうかね…おそらく、小説を書く時は心身が「四苦八苦」するわけですが、それを分析するには時間軸を逆さまにして「苦八苦四」することになるのだ、みたいな…おわかりいただけますでしょうか^^;?
雀部 > あ、確かにそれはそうですよね(汗;)>『物語工学論』の方法に沿って書かれた本
 『物語工学論』という題名にも感心したのですが、この題名の由来については“「物語」と「工学」を組み合わせるという発想を初めて見たのは、『キューティーハニー』と『スケバン刑事』の企画段階を語る随想において”と本書の脚注にありました。
 だとすれば、この二つのシリーズの成功の一番の原因は、『物語工学論』的に見るとどこなのでしょうか。
新城 > 工学的なスタンスに限定していえば、従来の組み合わせを活かしつつ当時の時代の空気を敏感に感じて導入したところが凄い、ということになると思いますね。
 前者は『〜工学論』にも記したとおり、「初期魔女っ子もの〜女の子の職業変身もの」定型を、名探偵・多羅尾伴内という大人向けキャラと掛け合わせたわけですし(だから当時のハニーは正体をあかす前に「ふふふ、ある時は〜〜しかしてその実体は!」云々と古風な名乗りをあげるわけです)、後者は「スケバン」×「刑事」という、まるで手術台の上のミシンと雨傘みたいな組み合わせを、多彩なキャラ群(第二高等少年院・地獄城を含む^^;)で強引にねじ伏せていて…うーむ今想い出しても凄い。凄すぎる。
 とにかく「新規な組み合わせ」から生じる「驚き」をどうやって読者に呑み込ませるか…というのは、もう技巧というかそれまでの精進の結果というか、まだ新城自身も分析しきれてない範疇なのですが。
 もちろん、それと表裏一体の問題として、「うまくいかなかった新規な発想」「連載打ち切りになった幻の傑作・名作」もきちんと分析・評価せねば、工学的には道半ばなのですが。それゆえ最近は「物語における失敗工学」みたいなことも妄想しております。(たとえば『スケバン刑事』の直後に和田慎二先生が描いた『ピグマリオ』は、堂々たる異世界ファンタジーの傑作なのですが、当時はドラクエ以前なのでまったく受け容れられず、早々と「第一部終了」してましたからね…しかも数年後に第二部が始まると今度は大ヒットしてしまう、と。なんと興味深い… ←ミスター・スポック風に)
 こうした「読者の、同時代の空気」みたいなものも既に一部では(SNSやPOSを活用して)解析がすすんでいるという噂も聞きますが。おそらく政治的利用も、され始めてると思いますし。うーむ民主政治の危機…。
雀部 > 詳しくありがとうございます。
 『ピグマリオ』は、私も「あれっ、これってなんで途中止めになっちゃったんだろう」と疑問に思ったくちです(笑)
 「読者の、同時代の空気」感、某巨大掲示板なんかで感じますねえ。この膨大な書き込みの中のどれだけが空気感を誘導する意図的なものなんだろうかと……
新城 > なにやら最近の報道を眺めていると、過半は「ひそかにお金を払ってたスポンサーが注文したとおりの書き込み」だったのかもと妄想しております。さきほど民主政治の危機と言いましたが、そもそも道具が使用者よりも賢く振る舞うことなんて歴史始まって以来なかったわけで、悲観的楽観主義者である新城としては「どうせこんなことになるとわかっていたのだ」とニヤニヤするばっかりの昨今です。
 本格的に遺伝子改造とか意識のアップロードとかするまでは、諸々あいかわらずでしょうし、まだしばらくは過去の歴史を手動でひもといて因果関係をいろいろ妄想するほうが早そうだな……てな感じで物語工学の続篇をぼんやり構想してます。
雀部 > 同じく『物語工学論』からなんですが、うちの長男(子供二人。基本的にはラノベ読み)は、ちょっと暇なときは大抵スマホで「小説家になろう」というサイトを読んで暇つぶししてるんで、なるほどなあと思いました。>二極化
新城 > おお、やはり「なろう」系は強いようですね……競合プラットフォームはないのかしらん。
雀部 > あそこが一番大手みたいですねぇ。
 新城先生の比較的最近の本の中で『さよなら、ジンジャー・エンジェル』『マルジナリアの妙薬』『tokyo404』には、作家新城カズマ氏とおぼしき人物が登場するのですが、これは何か理由があるのでしょうか。
新城 > あ、そういえばそうですね。ちなみに『ジンジャー・エンジェル』は『15x24』の後日譚という要素もちょびっとだけあるのですが、その流れで……というのは実は『15x24』の中にも新城本人はチラリと登場してたりなんかして^^;主要キャラの一人にお金を貸してる逸話があったのですが構成の都合上カットされてるのです。さらに余談ですが、主要キャラのうち笹浦耕と西満里衣についてはその後の展開も思いついて(というか当人たちから聞かされて)、いつか書きたいなあと思ってます。
 ……という文章からも判るとおり、新城の小説に出てくる人たちは、新城の脳内で「かなり実在して」いて、ちゃんと生活があって、年齢も重ねて、引っ越ししたり就職したり繁華街ですれ違ったり結婚したり子孫を増やしたりしがちなのです。
 『マルジナリア』と『404』はメタフィクション傾向が強いので、作者が出てくるのは言ってみれば「お作法」みたいなもんで。
雀部 > なるほど。新城先生が「散歩男爵」 で試みられた「新城カズマの #tokyo404 (トーキョウ・ヨンマルヨン)刊行記念企画」ゲームも確かにメタフィクション的ですね。
 この三冊とも、新城先生が物語的想像力の可能性と重要性を呈示されているように感じたのですが……
新城 > 三作を書いていたのが『物語工学論』や『われら銀河をググるべきや』を作ってたころで、電子書籍やツイッターも話題になってましたし、ちょうどそのへんのことを考えてた時期だったんですね。あの当時の結論としては『マルジナリア』に書いたことが、まあまあ良い線いってるかなと思いますし、いろいろ仕掛けもあるので、あれこれひねって読んでいただければありがたいです。
 で、その後も妄想はひろがるいっぽうで、最近は「架空人の生存権vsコホート民族主義」やら「能体財の経済学と折口信夫の接点」やらについて考え中です。うーむ早く作品に盛り込まねば。
雀部 > 難しそうだけど、お待ちしております(笑)
 『tokyo404』に講談社の『クレージー・ユーモア 海外SF傑作選』が稀覯本として出てきてますが、この中でどの短編が一番お好きなのでしょうか。
新城 > やはり「怪獣の時代」ですよ! ←なんだかんだいって、ただの怪獣好き^^;
 とはいえ最近はネットのおかげで『海外SF傑作選』もわりと楽に入手できるとかできないとか……うーむ昭和は遠くなりにけり。
雀部 > 『海外SF傑作選』全部持ってます←自慢(汗;)
 実は、AIによる創作活動は実用化されていて『tokyo404』は、その成果だったりすることはないのでしょうか?(笑)
新城 > や、むしろすでに世界のあちこちで実用化されてるのではと……たとえば政治家の間抜けな発言とか、あちこちで起きてるアホアホしい事件とかはすべて背後でAIが量産してて……でもって実はAI=Artificial Ignorance[人工痴能]の略でした、みたいなオチが数年後に!
雀部 > 国家の重大事にArtificial Ignoranceが活躍するのは、出来れば避けてほしいぞ(笑)
 「新城カズマが考え中のこと」で、いろんな試みをされてますが……
 今一番ほしいものは「時間」だったりしませんか?(笑)
新城 > まさに仰せのとおりであります! 妄想とも企画案ともつかないネタが次々脳内で発生する毎日で……そのうち妄想が重力崩壊おこすんじゃないかと心配です。
雀部 > 初の歴史小説らしい『島津戦記 』の進行具合はいかがでしょう?
新城 > 『島津戦記』のほうはおかげさまで現在最終校正中で、9月末に新潮社さまから刊行予定です。さらに、『島津戦記』の姉妹篇で、世界観&キャラがクロスオーバーしている連作歴史短編集『玩物双紙』も双葉社さまから相前後して刊行予定で、くわえて来年には同じ世界観で大坂城を扱う歴史小説企画もあったりなんかして……この一連の島津サーガというか島津クロニクルについては「島津戦記刊行戦記」でも随時お伝えしてゆきますので、ぜひ御覧になってください。
雀部 > 最近、歴史ミステリを読むことも多いので『島津戦記』お待ちしております。もちろん新しいSFシリーズも、早めにお願いします。だんだんと本読むスタミナが減りつつあるんで(泣)
 今回はお忙しい中、インタビューに応じていただきありがとうございました。


[新城/カズマ]
生年不詳。作家、架空言語設計家、古書蒐集家。グランドマスターをつとめたメールゲーム「蓬莱学園」を小説化した『蓬莱学園の初恋!』(1991年富士見ファンタジア文庫)で商業デビュー。SF『星の、バベル』を経て『サマー/タイム/トラベラー』(全2巻、ハヤカワ文庫)で第37回星雲賞受賞。他に『15×24』『物語工学論』『tokyo404』など
[雀部]
最近歴史ミステリを読むことも多いオールドSFファン。

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