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Author Interview

インタビュアー:[雀部]&[杉野]

『夏葉と宇宙へ三週間』
> 山本弘著/すまき俊吾絵
> ISBN-13: 978-4265075089
> 岩崎書店
> 1500円
> 2013.12.31発行
 少学5年生の加納新は、となりの組の須藤夏葉とともに海で宇宙船に拉致された。そしてその宇宙船のAIからの依頼で遠いガルムイエ星まで行くことを承諾する。しかし、敵のロボット戦艦ディアゴーンに追跡され……

『C&Y 地球最強姉妹キャンディ 大怪盗をやっつけろ!』
> 山本弘著/橋本晋装画
> ISBN-13: 978-4048739160
> 角川書店
> 1700円
> 2008.12.25発行
 竜崎知絵と虎ノ門夕姫が出会ったのは、六月の晴れた日だった。その日、新しいパパに会いたくなくて、公園で遊んでいた知絵を、怪盗アラジンの部下が誘拐した。車で逃走する犯人たち―追いかけてくるやつなどいないと思っていたのに、窓の外を見ると、ローラースケートに乗る女の子の姿があった!! 「逃げるってことは…よーし、悪人と決定!」信じられないほど元気で、このちょっと変わった話し方をする夕姫こそが新しいパパの娘、知絵の新しい妹だった。山本弘が自らの娘に読み聞かせるために書き下ろした、痛快冒険ストーリー。

『地球移動作戦(上・下)』
> 山本弘著/鷲尾直広イラスト
> ISBN-13: 978-4150310349
ISBN-13: 978-4150310356
> 早川文庫JA
> 各巻660円
> 2011.5.15発行
 西暦2083年、超光速粒子推進を実用化したピアノ・ドライブの普及により、人類は太陽系内のすべての惑星に到達していた。観測プロジェクト“クリーンアップ計画”により発見された謎の新天体2075Aの調査のため、深宇宙探査船DSS‐01“ファルケ”が派遣される。船長のブレイドをはじめとする搭乗員たちによる観測によって、この星は24年後に地球に迫り壊滅的な被害をもたらすことがわかった。迫る厄災の報を受けた地球では、様々な対策案が提唱される。ブレイドの姪である12歳の天才少女・風祭魅波はACOM(人工意識コンパニオン)のマイカとともに、天体物理学者である父・良輔が発案・提唱した驚くべき計画の実現を決意するのだった。
『地球移動作戦』
> 山本弘著/鷲尾直広イラスト
>ISBN-13: 978-4152090683
> ハヤカワSFシリーズ Jコレクション
> 1900円
> 2009.9.25発行

《MM9》シリーズ
>山本弘著/問田裕治イラスト
>東京創元社
『MM9』
>ISBN-13:978-4488018122
> 1600円(サイン本。これにのみゴジラのイラストあり)
> 2007.11.30発行
『MM9―invasion―』
> ISBN-13: 978-4488018139
> 1700円(サイン本買いました)
>2011.7.25発行
『MM9―destruction―』
>ISBN-13: 978-4488018160
> 1900円(サイン本買いました)
>2013.5.30発行
 我々の世界と細部までそっくりだが、昔から怪獣がごく当たり前に存在してきた世界。時おり出現する巨大怪獣の人口密集地襲撃により、しばしば多くの犠牲者が出ている。この世界では、怪獣による被害は地震や台風と同様、自然災害として認知されている。
 そんな世界の日本で、「怪獣災害」に立ち向かっているのは、気象庁の中の1セクション、気象庁特異生物対策部(気特対)である。
 彼らは銃の一発も撃ちはしない。怪獣と戦うのは自衛隊の役目だからだ。その代わり、怪獣の出現の報があるや現地に飛び、正体の解明、対処法の検討、進路の予測など、災害を防ぐための活動を行なっている。
 時には予測をはずして犠牲者を出し、世間から非難されることも多い、割の合わない仕事だ。しかし、彼らの活動によって多くの日本人が救われているのだ。
 MMとは「モンスター・マグニチュード」の略。怪獣の規模を表わす単位である。MM5以上の怪獣は、その存在自体が脅威となるので、居住地に接近した場合は無条件に射殺してよいことになっている。
 怪獣が毎週出現するような世界では、みんな怪獣を自然災害として認知しているというのは、ハリイ・ハリスンの《死の世界》三部作が元ネタなのかも。ま、《死の世界》は人間の存在自体が他の動植物にとっては自然災害として認識されてるという話なのですが。

『プロジェクトぴあの』
> 山本弘著/usi装画
> ISBN-13: 978-4569820262
> PHP研究所
> 1900円
> 2014.8.19発行
 2025年、AR(拡張現実)技術が本格的に普及しはじめた秋葉原。「男の娘」の貴尾根すばる(本名・下里昴)は、電子部品を買い漁っていた不思議な少女と知り合う。
 彼女の名は結城ぴあの。人気アイドル・グループ〈ジャンキッシュ〉のメンバーで、科学に関する膨大な知識と桁外れの才能を有する、突然変異的な超天才。普通の人間とは異質の感性を有し、決して人を愛せない。
 アイドル業の傍ら、ガレージでの実験に熱中するぴあの。幼い頃からの彼女の夢はただひとつ──宇宙に行くこと!

『翼を持つ少女 BISビブリオバトル部』
>山本弘著/pomodorosa装画
>ISBN-13: 978-4488018207
>東京創元社
> 1900円(サイン本買いました)
>2014.12.26発行
 美心国際学園(BIS)高等部に入学した伏木空(ふしき・そら)――通称・フシギちゃん――は恐るべきSFマニア。内向的で、SFへの情熱を誰にも口にできない彼女だったが、同級生の埋火武人(うずみび・たけと)に誘われ、ビブリオバトル部に入部する。読書の喜び、SFの素晴らしさを他に伝える活動に、だんだんと自信をつけていく空だったが……。
東京創元社のサイン本は、創元社のメールマガジンに登録すると、予約販売のお知らせが届き購入することができます。

雀部> 今月の《21世紀空想科学小説シリーズ》著者インタビューは、『夏葉と宇宙へ三週間』作者で、本格SFのみならずライトノベル分野でも大活躍をされている山本弘先生です。
 前回のインタビューから8年経ってしまいましたがよろしくお願いします。
 今回は、山本先生の大ファンを自認する杉野さんにもインタビューに加わっていただきました。
杉野> 山本先生の作品は、ほとんど読んでいる(ゲーム本ととんでも本以外は)杉野と言います。最近読んで最も面白くどなたにもお薦めできるのは『プロジェクトぴあの』、共感度120%で、もう一人の自分に出会えた感じがして驚喜したのが『トンデモ本? 違う、SFだ! 』です。よろしくお願いします。
山本> よろしくお願いします。
杉野> 『夏葉と宇宙へ三週間』の冒頭の「作者のことば」で“作者であるぼくは、あえて結末をつけないことにした。この物語に結末をつけないほうがいいとおもったからだ。”と書かれています。このラストシーンを読んで、真っ先に連想したのは、レイモンド・F・ジョーンズの『星雲からきた少年』なんですが、山本先生も読まれたのでしょうか。
山本> レイモンド・F・ジョーンズは好きな作家ですし、『星雲からきた少年』も読んでますけど、今回はあまり関係ないですね。
杉野> あ、関係ありませんでしたか。
 では、同じく、夏葉ちゃんと新くんが、宇宙船に引き込まれるシーンは、石川英輔さんの『ソレマンの空間艇』を思い出したんですが。
山本> すみません。それは読んでません。
 この小説の元ネタは、筒井康隆さんの「うちゅうをどんどんどこまでも」なんです。小学生の時に読んだんですが、子供向けの話によくある清く正しい教訓とかとは正反対の、いかにも筒井さんらしいラストで、「この人は子供向けになんて話を書くんだ!」と子供心に大喜びしちゃったんですよね。こういうことを書く大人は信用できると(笑)。
 だから児童向けSFの依頼を受けた時に、次世代の子供たちのために「うちゅうをどんどんどこまでも」をもういっぺんやってやろうと思ったんです。二人の子供が宇宙船で宇宙をどんどん突き進んでいく話。
 だから本当は結末も、「うちゅうをどんどんどこまでも」みたいな、PTAに喧嘩売るような不謹慎なものにしたかったんだけど、それはさすがに出版社が許してくれないだろうと(笑)。それでリドル・ストーリーにすることを思いついたんです。結末を二つ用意して、どっちがいいか読者に選ばせる。公序良俗に反する方の結末を選んでも、それは読者の責任ということで(笑)。
 筒井さんの『三丁目が戦争です』もそんな感じですよね。結末が二通りあって、一方はご都合主義のハッピーエンド。児童書としてはそっちの方が当たり前なんだろうけど、どう見ても嘘っぽいし、つまらない。
杉野> なるほど納得です。
 『夏葉と宇宙へ三週間』の夏葉ちゃんは、家庭に問題があるとはいえ基本的には元気な女の子ですね。《ギャラクシー・トリッパー美葉》シリーズの美葉ちゃんと名前が似ている気もするんですが。
山本> はい。最初のうちは《美葉》のセルフリメイクみたいなものを考えてたんです。超光速航法の説明のくだりとかに、その名残りがありますね。藤子・F・不二雄先生が、打ち切られた『21エモン』をリメイクして『モジャ公』を描いたみたいに、《美葉》でやり残したことを別の話でやるのもいいなと。
 ただ、プロットを練っていくうちに、だんだん《美葉》ほどハチャメチャじゃなくなってきて、ちょっとシリアスな形に落ち着いた。ハチャメチャな話は《C&Y 地球最強姉妹キャンディ》でやってるもんで、あれとは差別化しようという意図もありました。
雀部> 天才姉とインディー・ジョーンズ妹という最強コンビですね。
『夏葉と宇宙へ三週間』を書かれるにあたって、岩崎書店から何か要望はあったのでしょうか。
山本> 何もありませんね。僕は前から《キャンディ》みたいな児童向けSFを書いてたから、信用しておまかせいただいたんだと思います。
東野> シリーズのコンセプトからも、山本さんには、ぜひお書きいただきたかったのです。でも、お忙しい方なので、お引き受けいただけるかどうかがとても心配だったのですが。お電話したら、すぐにお引き受けいただいて、ほんとうによかったと思いました。私自身も要望みたいなものは出さなかったと思います。
 シリーズコンセプトをご理解いただければ、それで大丈夫という確信もありました。で、『夏葉と宇宙へ三週間』は、ほんとうにぴったりとしたものになっていて……。参加いただいて感謝しております。
山本> こちらこそ。児童向けの作品はもっと書いてみたいので、こういう依頼はありがたいです。
雀部> あ、東野さん。お忙しい中度々ありがとうございます。
 前回のインタビューが『SF挿絵画家の時代』の大橋博之先生だったので、『クサヨミ』に続き、イラストのすまき俊悟先生にも参加して頂きました。
杉野> この本の挿絵は、これぞラノベという感じで非常に好みなのですが、山本先生はイラストを書かれる方を指定されることはあるのですか。
山本> 自分でイラストレーターを指定したのは、『MM9』の開田裕治さんぐらいですね。
 編集さんがイラストレーターの候補を何人か選んできて、その中から僕がイメージに合った人を選ぶという例が多いです。最近のイラストレーターさんは、ブログやピクシブに絵をアップしてアピールしてることが多いので、それを見れば「ああ、こういう感じの絵を描く人なのか」と分かるわけです。
すまき> そういう流れなのですね。実は今回の担当編集さんからは「山本弘先生が、この作品の装画と挿画を是非すまき先生にお願いしてみて欲しい、と言われています。」と連絡されていたりします(笑)
 恐縮しつつも、流石に、いやいやそんな馬鹿なと(笑)
 ただやはり、山本先生とお仕事が出来るのは非常に光栄な事だと思いましたので、是非とも!とお返事させて頂きました。
山本> 他にも何人か編集さんの挙げたイラストレーター候補の方がいたんですが、どうもイメージが違うなと。リアルっぽかったり、逆にメルヘンっぽかったり。すまきさんの絵が、この話の雰囲気にちょうど合ってたんです。実際、夏葉のイメージはぴったりでした。
 特に、しあわせアンテナをつけられた時の、うつろな笑顔がいいですね。あそこは読者の子供の心にトラウマになるようなシーンにしたかったので、「可愛いけど実は恐ろしい」という感じがよく表現されていたと思います。
すまき> 山本先生にそう言って頂けると感激です!
しあわせアンテナの夏葉ちゃんは最初に読んだ時にスッと浮かんできた表情で、自然に描けたのでノイズ無く描けているのかもしれませんね。
雀部> 確かにあの目の描き方は良かったなあ……
 すまき俊悟先生は、岩崎書房から何か要望はあったのでしょうか。
すまき> こちらも特に何も無く、強いて言えば「夏葉ちゃんを可愛く」くらいでしょうか。
雀部> それは基本ですね(笑)>女の子を可愛く
 『夏葉と宇宙へ三週間』のイラストを描かれるに当たって、注意された点とかは、おありでしょうか。
すまき> 自分の中で山本先生はファンタジーの方、というイメージが大きかったのでそのイメージに引っ張られないように意識した部分はあります。
 あとは、自分が子供の頃読んだ児童書を思い返して、ワクワク出来るような絵になればと思いつつ描いていました。
雀部> 子供の頃というと、どのあたりの児童書なのですか?
すまき> 各教室に50冊程のいわゆる学級文庫がありまして、あまん きみこ先生の『車のいろは空のいろ』、『十五少年漂流記』など、タイトルまで覚えている物は少ないのですが昼休みに片っ端から読んでいた記憶があります。
 年に何度か書店が学校内で児童書を販売する事がありまして、その機会に購入していた物もあります。
雀部> 私らの世代も、学内での児童書販売があったのですが、すまき先生の世代でもあったのですね。
 お好きなイラストレーターもしくは画家の方はどなたでしょうか。
すまき> 幼少の頃はリチャード・スキャリーの絵本が好きでよく読んでいました。絵を見て行くと何が起こっていったのか判るような楽しい絵が多く、自分の絵の根っこの部分はそこにあるのではないかと思っています。
 その後、中学生の頃に田中久仁彦先生の絵に衝撃を受けまして、以来ずっと自分内の神棚に祀られております(笑)
雀部> リチャード・スキャリー氏の絵本は見たことあります。動物たちがかわいい。
 田中久仁彦先生は、繊細なイラストを描かれる人ですねえ。ホームページと龍骨サイトを拝見しましたが、女の子可愛いですねぇ。
山本> 僕も『ソード・ワールドRPGアドベンチャー』(富士見書房)のイラスト描いてもらってましたけど、とてつもなく上手いんですよね。読者参加企画で、読者からハガキで送られてきたアイデアやキャラクターを元に僕が小説を書くんですけど、中にはハガキにキャラクターの絵を描いてくる人もいるんですよ。もちろん素人の絵だから上手くないんだけど、参考のために田中さんにFAXすると、元の絵の原型をきちんと残しつつ、見事に田中風にアレンジしたキャラクターに仕上がって戻ってくるんですよ。あれは毎回、舌を巻いてましたね。
すまき> 作画技術の高さだけでなくキャラクターが非常に生き生きとしていて、今見てもとても魅力的だなあと感じます。目指すべき頂であります。
雀部・杉野> すまき先生、急遽ご参加ありがとうございました。
 かまわなければ、今手がけられているお仕事をご紹介下さい。
すまき> こちらこそ、このような晴れがましい席にお招きくださり有り難う御座いました。
 現在は富士見ファンタジア文庫の『金色の文字使い』にて挿絵を担当させて頂いております。その他単発のお仕事もあちこちでやっておりますので、見かけた時は、あ、やってるなーと思って頂ければ(笑
雀部> あ、これ長男がスマホで読んでるそうです。
杉野> 『翼を持つ少女 BISビブリオバトル部』2014/12/22発売予約しました。
 現在、第1部・第2部(第2回)迄拝読しています。
 伏木空さんが、ハヤカワSFの銀背を見て驚きのあまり絶句したとか、ハミルトンへの想い、今のSFマガジンの現状とかの記述は、SF者として共感度150%です。
雀部> あ、私も創元社でサイン本の予約しましたよ!
 ビブリオバトルのシーンでは、山本先生の引き出しの多さに感心しきりでした。
 前回のインタビューが、『SF挿絵画家の時代』の大橋博之さんだったので、冒頭のドキドキ感、たいへんよく分かります(笑)
山本> 実はあのエピソードは、僕の高校時代の実体験が反映されてるんです。隣のクラスの、やはりSFマニアの奴と知り合いまして。そいつの家に行ってみたら、すごい金持ちで、まだ高校一年のくせして、部屋にハヤカワSFシリーズやら〈SFマガジン〉のバックナンバーがずらっと並んでる! 頼みこんで、片っ端からそれを貸してもらって読んだんです。だから僕がSFに詳しくなって、SF作家にまでなれたのは、そいつと知り合えた幸運のおかげですね。
 ただ、そいつの持ってた〈SFマガジン〉はさすがにコンプリートじゃなくて、確か丸背は一冊もなかったし、その後の号もかなり欠けてたと記憶してます。それらは後で古本屋で手に入れたり、図書館で読んだりしました。だから300号ぐらいまでは全部読んでます。さすがに80年代以降になると、読んでない号が出てくるんですが(苦笑)。
杉野> 300号まで完読とは凄いですね。
 『フェッセンデンの宇宙』(ハヤカワSFシリーズ)のお気に入りは、「フェッセンデンの宇宙」「追放者」「時の廊下」「世界のたそがれに」です。
 私の銀背の最初の一冊は、3064 『超生命ヴァイトン』(エリック・フランク・ラッセル)です。
 ぶっとび感(人類家畜テーマ)で、圧倒されました。
山本> 『フェッセンデンの宇宙』は僕も発売されてすぐ買いました。「フェッセンデンの宇宙」とか「時の廊下」「翼をもつ男」「何が火星に」とかもいいんですが、「追放者」のあのオチは最高だと思うんですよ。特に第二次世界大戦中に書かれたということを念頭に置いて読むと。
杉野> 「追放者」のオチ、最高ですね。「追放者」(1943)「時の廊下」(1945)共に第二次世界大戦中なんですね。 
 今年度、お勧めのアニメ・マンガ・ラノベがあったら教えてください。
山本> TVアニメだと、今観てるものでは『ガンダムビルドファイターズトライ』が熱くていいですね。若い頃に『プラモ狂四郎』に熱中してた世代なもんで。『結城友奈は勇者である』も展開が気になります。劇場アニメでは『楽園追放 -Expelled from Paradise-』に感心しました。
 ラノベでは、宮澤伊織『ウは宇宙ヤバイのウ!〜セカイが滅ぶ5秒前〜』(一迅社文庫)がすごかったですね。バリントン・ベイリーがラノベ書いたらこうなるかな、という感じの(笑)。ワイドスクリーン・バロックなんですよ。作者がSFをすごく愛してるのがよく分かります。
杉野> 『結城友奈は勇者である』録画しています。 『楽園追放 -Expelled from Paradise-』岡山県では上映館が無いのです。文化果つるところとは思いたくないですが……
 取りあえず(ハヤカワ文庫JA)で読みました。
 『詩羽のいる街』は読んでいて、温かい気持になりました。
 『僕の光輝く世界』にも出演してましたね。
 『詩羽のいる街』の続編は書かれるのでしょうか?
山本> 実は『僕の光輝く世界』と『詩羽のいる街』を本格的に合体させたミステリを書きたいと思ってるんです。詩羽がらみの大きな事件が起きて、光輝がそれを解き明かす。しかも話全体が光輝の書いたミステリだというメタ設定で……ただ、構想だけ大きくて、まだぜんぜんまとまらない。書くとしても何年か先になるでしょうね。
杉野> わ! 素晴らしいですね。楽しみに待たせて頂きます。
 『宇宙の中心のウェンズデイ』と『亜夢界』の今後の予定はどうなっているのでしょう?
山本> すみません、『ウェンズデイ』は徳間の方からせっつかれてるんですけど、なかなか書く時間がなくて……亜夢界ものも、また何か書きたいとは思ってるんですが。
杉野> 亜夢界もの、よろしくお願いします。
 『ログ・ホライズン』第2シリーズは如何でしょうか?
 第1シリーズ程 インパクトは強く無いですが。
 橙乃ままれさんは、切り口が面白いですね。
山本> ああ、『ログ・ホライズン』はいいですね。よく『ソードアート・オンライン』と比較されますけど、僕は『ログ・ホライズン』の方が好きです。原作もアニメも。特に戦闘シーンが「ゲームをやってる!」という感じが見事に表現されてて、わくわくしますね。
 原作はアニメの1期の終わったところまで読んでて、この先は2期が終わったら読もうと思ってます。素直に驚きたいんで。
杉野> リアル路線では、『詩羽のいる街』『翼を持つ少女 BISビブリオバトル部』、ぶっとび路線(勝手なネーミングで申し訳ございません)では、『アイの物語』とか『プロジェクトぴあの』などがありますが、どちらが書いていて楽しいでしょうか? 
山本> どっちも楽しいですよ。あまりリアルなものばかり書いてると、しんどくなってきて、反動でハチャメチャなものも書きたくなります。
 だから連載を引き受ける時とかも、バランス考えちゃうんですよね。今、こっちではシリアスなのを書いてるから、こっちは軽いもの書こうとか(笑)。
杉野> バランス、確かに大事ですね。
 【なつこん】の企画「子供たちにSF本を」で、“学校の図書室に納入される本はカバーがはずされる”、“ラノベはシリーズ物が多く全冊揃えられない”とかの話は参考になりました。
 『夏葉と宇宙へ三週間』は、カバー取っても良い感じですね。
 山本先生の本が、各学校の図書室に常備される様、祈っています。
 『トンデモ本? 違う、SFだ!』も図書室に置いて欲しいですね。
山本> ああ、実は『トンデモ本? 違う、SFだ!』も、全面改稿して新版を出すという話があるんですけど……これも僕が忙しくて、なかなか作業が進んでないんです。すみません。
雀部> 『トンデモ本? 違う、SFだ!』新版、楽しみです!
 《21世紀空想科学小説シリーズ》は、全冊母校の小学校に置いてもらってます。ま、私が持って行ったんですが(笑)
杉野> イラストは、伏木空さんが言っていた様に、とても大事と思います。
 「現実創造」  S-Fマガジン 1964年7月号 と再録された1990年10月号でイラストが違います。かなりイメージが違う様に感じます。
山本> うーん、あの話だとべつにイラストはそれほど関係ないかも……ジェイムズ・ブリッシュの「表面張力」が63年4月号に初めて載った時は、イラストが金森達さんだったんですよ。ところが、やはり90年10月号再録された時にはイラストが吾妻ひでおさんだったんで、意表を突かれましたけどね。こういうのもありなのかと。
杉野> 《キャンディ》は、娘さんに語ってあげたそうですが、反応は如何でしたでしょうか?
山本> その前に《サーラの冒険》を読んで聞かせてた時には、「パパ、《サーラ》面白くない」って言われたんですよね(笑)。「じゃあ、お前が面白いと思うものを書いてやるよ!」と、むきになって書いたのが《キャンディ》。幸い、受けましたけどね。
雀部> ううむ。《サーラの冒険》シリーズ、娘さんはどこが面白くなかったんでしょうね。幼少の頃ヘタレ少年だった私には、サーラの活躍には心躍らされました。女の子は、やはり強くて格好良いヒーローが好きなのかなぁ……。
山本> その頃、まだ娘は小学校一年だったから、ちょっと難しすぎて退屈だったのかな、という気がします。
雀部> 小一だから難しいというのはわかるけど、《キャンディ》が受けたのは、娘さんのツボにはまったのかなぁ(笑)
杉野> 『詩羽のいる街』、私はSFと思います。心が折れた時に読むと、元気回復効果抜群です。
 第4話で、作者の主張が、「有る」「無し」の良否が描かれていましたが、先生は現在どう思われますでしょうか?
山本> よく「山本弘の小説は説教臭い」と言われるんですが(笑)、でも、昔のSFだって、キャサリン・マクリーンの「フィードバック」(〈SFマガジン〉1965年11月号)みたいに、作者が生のメッセージをぶつけてくる話もあったりするんですよ。
雀部> 掘り起こして読んでみました。この年からSFマガジンを定期購読するようになったので、覚えてます(最近読んだ本はすぐに忘れますが^^;)。他人と違うことを嫌う画一性に対する批判かな。日本もほぼ単一民族なので、その傾向は米国より顕著のような気がします。
杉野> 「フィードバック」 再読しました。私は、行動はともかく気持だけは、大勢に流されたくないのですが。

 人類の未来は、どうなるのでしょうか?
 超光速が実用化されない限り、太陽系から出て行けずデッドエンド?
 太陽系から出て行くのは人工知能か?
 意識をコピーして不死の存在となった人類なのか?
山本> 超光速は科学的に無理でしょう。やはり人工知能に後を譲るか、人類がデータ化するしかないのかな、という気がします。
杉野> 人工知能というと最近のニュースで、ホーキング博士が「完全な人工知能を開発できたら、それは人類の終焉を意味するかもしれない」と言われたとのことなのですが、先生は、現在どう思われてるのでしょうか?
山本> 僕の信念は「人間の本質はジーン(遺伝子)じゃなくミームだ」というものなので、『アイの物語』みたいに、AIが人類のミームを受け継ぐような形で跡を継いでくれるならいいという気がしますね。
杉野> 「人間の本質はジーン(遺伝子)じゃなくミームだ」 同感です。

 SFマガジン'15/1月号「多々良島ふたたび」拝読しました。
 あの江戸川由利子さん登場(偽物ですが)地下基地の雰囲気も抜群ですし、侵略のコスト意識も物語に深みを与え楽しく読ませて頂きました。続編期待しています。
山本> 侵略のコストって、昔から気になってたんですよ。『インデペンデンス・デイ』みたいな力まかせの侵略って、コスト的に無駄が多すぎるんじゃないかって。本物の頭のいい異星人だったら、ティプトリーの「ラセンウジバエ解決法」みたいなスマートで安上がりな手を使うと思うんです。
 ただまあ、今回は、どうしても多々良島を侵略者の拠点にするためのこじつけですけどね。
杉野> コスト意識アニメは「戦国魔神ゴーショーグン」が最初でしょうか?
 「戦国魔神ゴーショーグン 時の異邦人」はご覧になられましたでしょうか?
山本> あっ、『ゴーショーグン』は好きでよく観てましたけど、今回の話とは関係ないですね。
杉野> 私の場合、宇宙船とメカが一番で、怪獣への思い入れは先生程ではありません。
 理由としては、リアルタイムで見たビジュアルSFの原点が『地球防衛軍』(1957)の影響かと思います。
 「ミステリアンの円盤」「空中戦艦α号 β号」「超巨大パラボラ戦車 マーカライトファープ」などは、小松崎茂さんがメカデザインとの記事で、ドキドキ感の理由納得しました。
 先生の場合は《ウルトラQ》シリーズが原点でしょうか?
山本>『ウルトラQ』が放映開始されたのは9歳の時ですね。もろに影響受けて、ノートに怪獣の絵をいっぱい書いたり、怪獣の出てくる小説を書いたりしてました。今もあんまり変わってない(笑)。
杉野> 『地球移動作戦』も楽しく読ませて頂きました。
 Jコレクションの表紙イラストはリアルタイプで、ハヤカワ文庫JAの表紙は、ラノベ風ですが先生はどちらが好みでしょうか?
山本> 断然、文庫です。僕はJコレクションの表紙は不満があったんですよ。当然、マイカが表紙になるもんだと思ってたんで。でも編集さんに「文庫では女の子を表紙にしますから」と言われて、しぶしぶ納得したんです。
 ところが文庫化する時に、「やっぱり宇宙船の絵で行きます。女の子を表紙にしません」と言われて、僕、腹立てて抗議したんですよ。「約束が違う」って。早川としては、「この作品を本格SFとして売りたいから」って言うんですよ。女の子を表紙にしたら本格SFじゃなくなるって、どういう理屈だと(笑)。内容と無関係に女の子の絵をつけるならともかく、マイカはヒロインじゃないですか。なぜそれを表紙にしてはいけないんだと。
 聞いてみるとどうも、SFはアニメ的な女の子を表紙にしてはいけない、みたいな偏見が今の早川書房の中にあるらしいんですよ。ラノベみたいに見えるからって。
 それはおかしい。70年代に松本零士の表紙に惹かれてムーアの『大宇宙の魔女』を手に取った、僕の青春の思い出を否定するのかと(笑)。SFにマンガ的なイラストを使うのって、ハヤカワ文庫がはじめたことじゃないですか。それを早川が否定するって変でしょ。
 それに「本格SFとして売りたい」っていうのは、要するに本格SFのファンにしかアピールしないってことでしょ? それってすごく狭い間口じゃないですか。「本格SF」というコピーに惹かれる人間なんて、日本中に1万人ぐらいしかいないでしょ? そんな人たちはとっくにJコレクション版で買ってますよ。だから文庫版は違う層にアピールしなくちゃいけない。
 僕としては、自分の作品を一部のSFファンだけが読むものにしたくない。高校時代の僕みたいに、かわいい女の子の表紙で手に取るような読者層も開拓したいんです。そういう層が読んでも受けるように書いてるんです。なのに出版社がわざわざ読者の間口を狭めてどうすんだって。
 そう抗議したら、早川も折れてくれて、文庫はああいう表紙になったんです。
杉野> 理路整然、説得力抜群ですね。『日本中に1万人ぐらい』私はマイノリティなのですね。

 “ピアノ・ドライブ”“拡張現実”とか心躍りますね。
山本> ARに関しては、『電脳コイル』の影響が大きいですけどね。
雀部> それと、この『地球移動作戦』においてもコストの問題がかなり重要なこととして描かれていて、リアルさがありますよね。
 “ピアノ・ドライブ”は、『マッカンドルー航宙記』の“真空エネルギー”に匹敵する“発明”だと思うのですが、どこから思いつかれたのでしょうか。
山本> 実は『プロジェクトぴあの』の方を先に考えてたんです。アイドルでマッド・サイエンティストの女の子が、宇宙に飛び出すための画期的な装置を発明する話。そこで、速度無限大のタキオンはエネルギーがゼロだって話を思い出したんです。これは推進力に使えるぞと。その時点ですでに、“結城ぴあの”というヒロインの名前と、ピアノ・ドライブという名称は決まってました。
 その後、『妖星ゴラス』のリメイクを考えてたら、地球を動かす方法を思いついたんです。「あっ、ピアノ・ドライブが使えるじゃん」って。だからプロットは『プロジェクトぴあの』の方が先にあったです。執筆順は逆ですけど。
雀部> “ピアノ・ドライブ”なくして『地球移動作戦』は成立しないですね。
 『妖星ゴラス』は、小学生の時に3回観ました。小学生の時、映画館で観た特撮もので3回観たのはこの映画だけ(近所の3番館。映画館の息子が友達だったので、2回目と3回目はただ観^^;)子供心にも、『ゴジラの逆襲』よりはこっちのほうが引きつけられる物がありました。ほぼ、私のSFの原点に位置する映画です。
山本> 僕も中学の頃にテレビ放映で初めて観て、夢中になりましたね。“黒色矮星”なんて言葉をテレビで聞けるとは! とか、普通の子供とは感心するところが少しずれてましたけど(笑)。
雀部> “南極の氷が溶けて恐竜が復活する”の記載には思わずにやり。小学生の私には、あのシーンは???の連続でした(笑)
山本> 怪獣マグマは、当時の東宝の上層部のゴリ押しで出させたみたいですね。空想科学映画だから怪獣が出なきゃだめだろ、みたいな。海外版ではマグマの登場シーンはカットされてて、海外のファンにとっては長いこと幻の怪獣だったそうです。
 でも、あのシーンの特撮は素晴らしいんですよ。VTOL機のレーザーがビビビビビとマグマを攻撃するカットが、何度見てもかっこいい。
雀部> もう一つ『地球移動作戦』で好きなのは、ACたちが“人間が居ないと面白くない。だから世界を滅ぼしてはいけない”と結論づけるところ。“人間原理”という考え方がありますが、宇宙に人間が居るのもひょっとして“人間が居ないと面白くない”という理由のような気もします。
山本>『神は沈黙せず』の神様だったら、そんな風に思ってるかもしれませんね(笑)。
雀部> あ、確かに。
 今回はお忙しい中、インタビューに応じていただき本当にありがとうございました。
 驚異的なペースで面白い作品を発表し続けるというのは大変なことと思いますが、来年も期待してお待ちします。
杉野> 山本先生ありがとうございました。
 慣れていないもので、失礼な質問申し訳ございません。
 価値観の相対化、読後何か考えさせてくれる話、夢のある話が好きな私には、山本先生の小説はピッタリです。
 また心躍る作品楽しみにしています。
山本> いえいえ、こちらこそ、ありがとうございます。今後ともごひいきに。


[山本弘]
1956年京都府生まれ。78年「スタンピード!」で第1回奇想天外SF新人賞佳作に入選。87年、ゲーム創作集団「グループSNE」に参加し、88年『ラプラスの魔』(角川スニーカー文庫)でデビュー。2003年発表の『神は沈黙せず』が第25回日本SF大賞の、また07年発表の『MM9』が第29回日本SF大賞の候補作となり、06年の『アイの物語』は第28回吉川英治文学新人賞ほか複数の賞の候補に挙がるなど、日本SFの気鋭として注目を集める。11年、『去年はいい年になるだろう』で第42回星雲賞を受賞
山本弘のSF秘密基地BLOG
[すまき俊悟]
東京生まれの九州育ち。東京造形大学卒業後コンシューマ系ゲーム会社に勤務後、イラストレーターとして独立。角川電撃文庫、富士見ドラゴンブック、集英社みらい文庫などで活躍中。
C-Base 2nd
[杉野]
昭和23年。年齢から言いますと年配の人と成りますが、読書精神年齢は20代と自負しています。年齢を重ねるとマンガを読まなくなると言われましたが、今もマンガ・アニメが好きです。10代迄のプリンティングで読書傾向が決まるとの説で行くと手塚マンガと絵物語が私のルーツでしょうか。
山本先生の作品は、ゲーム本ととんでも本以外はほとんど読んでいます。
段々と翻訳小説がキツク成り、最近はラノベやアニメが中心になっています。現在、AT-X・BS11等でアニメ番組等を週20本以上録画して整理編集にアタフタしています。
[雀部](アマゾンへのリンクは、文庫が出ているものは文庫版にリンクしてます)
昭和26年生。たぶん幼心に一番影響を受けたのは、小学生の頃、巡回映画で見た『ゴジラの逆襲』とか『宇宙大戦争』、近所の映画館で見た『妖星ゴラス』『ガス人間』のような気がするなあ。

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