| TOP Short Novel Long Novel Review Interview Colummn Cartoon BBS Diary |

Author Interview

インタビュアー:[雀部]

↑《九十九神曼荼羅シリーズ》および《夢幻∞シリーズ》
左上から順に「ミスティックフロー・オンライン 第1話 冒険探偵(1)」「レギオン・チューナー・ラプソディ」「ハッピー・キーパー」「デンタル・ジャンパー」
「タイムレス・カプセル」「ジャンク・ジャンキー・ジャンクション」 「カウントダウン・イン・ブルー」
『夢幻∞シリーズ
ミスティックフロー・オンライン 第1話 冒険探偵(1)』
> 片理誠 作・画
> 小学館
> 216円
> 2016.7.15発行

夢幻∞シリーズ
 陣杜学園学生課から支給されたファインビジョン(ゴーグル型コンシューマーゲーム機)を装着した瞬間から、岩崎周の冒険は始まった。探偵として「世界の救済」を受注してしまった彼に、予想をはるかに超えた試練が待ち受けることになる。リアルな学園とバーチャルリアリティーのゲーム世界が交錯する新シリーズの登場。


『Type:STEELY タイプ・スティーリィ (上)』
> 片理誠著/緒方剛志イラスト
> ISBN-13: 978-4344823716
> 幻狼ファンタジアノベルス
> 900円
> 2011.11.30発行
 人間を無差別に攻撃する「全自動虐殺機械群」(アトロハード)によって、人類は滅亡へと向かっていた。第三番ドーム市に住む十五歳の新堂善騎は、敵を倒すために作られた有機系生体ロボットの「スティーリィ」に運悪く抜擢されてしまう。幼なじみのルクミ、親友の凛人らの励ましを受けながら、善騎は増殖し殺戮を繰り返すアトロハードと対峙するが…。

『Type:STEELY タイプ・スティーリィ (下)』
> 片理誠著/緒方剛志イラスト
> ISBN-13: 978-4344823921
> 幻狼ファンタジアノベルス
> 900円
> 2011.12.31発行
 人間を無差別に攻撃する「全自動虐殺機械群」(アトロハード)によって、人類が滅亡へと向かう時代。敵を倒すため作られた有機系生命体ロボット「スティーリィ」に抜擢された十五歳の新堂善騎は、熾烈な戦いで心も体も限界まで消耗する日々を送っていた。そんな中、大規模な敵の襲来を予感した善騎は―!? 逃れられない運命を前にした善騎に、果たして未来はあるのか。

『ガリレイドンナ 月光の女神たち』
> 片理誠著/梅津泰臣・teamGD原作/足立慎吾イラスト
> ISBN-13: 978-4022511539
> 朝日出版社
> 1200円
> 2014.2.28発行
 氷河期が訪れつつある2061年。イタリア・トスカーナ地方に住むガリレオ・ガリレイの末裔である葉月、神月、星月の三姉妹は、空賊やエネルギー企業で狙う「ガリレオテゾロ」をめぐる争いに巻き込まれてしまった。謎の美女・アンナの助力を得た三姉妹は、家族の再生と名誉をかけてガリレオの謎に挑む! アニメに基づく小説ならではのオリジナルストーリー!
『ECLIPSE PHASE』
> ロブ・ボイルほか著/朱鷺田祐介監訳/『エクリプス・フェイズ』翻訳チーム
> ISBN-13: 978-4775310229
> 新紀元社
> 7500円
> 2016.7.9発行
 技術の進歩により、肉体と精神の分離と再生が可能となった近未来。軍事AIの暴走により地球は壊滅し、人類は太陽系へと分散した。しかし、国家間の陰謀や残存する殺戮機械、エイリアンの残した遺物など、人類を破滅へと導きかねない危機はいまだ存在する。さぁ、あなたも秘密組織“ファイアウォール”のエージェント“センティネル”として、人類絶滅の危機に立ち向かうのだ!

雀部 >  片理先生お久しぶりです。八杉先生のインタビューの際に、SF Prologue Waveのシェアワールド企画「Eclipse Phase」では、“片理先生の作品がが入りやすく、なおかつSFとしても大変面白いのでお薦めですよ”とのことでしたので、これはぜひお話を伺わなくてはと……
 ということで、今回もよろしくお願いします。
片理 >  光栄です(笑)。ご無沙汰いたしております。よろしくお願い致します。「Eclipse Phase」の世界は本当にきちんと作られていて、しかも冒険心をくすぐるような設定ばかりなので、触れているだけでもワクワクしますよ。エンターテイメント系SFの最先端の一つだと思っています。とにかく設定が作り込まれているので、あとはキャラクターさえ配置すれば、物語が勝手に始まってくれるという(笑)。作家としては大助かり(笑)! 楽しんでいただければ、幸いです!
 6月28日には、とうとう日本語版のルールブックも発売になりました! これで更に「Eclipse Phase」の世界が我々の身近になるかと!
雀部 >  Amazonで、ロブ・ボイルの「エクリプス・フェイズ (Role&Roll RPG)」が出たようなので買ってみました。ゲームの本みたいですね。
片理 >  そうです、「会話型RPG」とか「TRPG」と呼ばれるアナログのゲームのルールブックです。コンピュータではなくて、「GM(ゲームマスター)」と呼ばれる人間を相手に行うRPGですね。決まった反応しかできないプログラムを相手にするのとは違って、とにかくお互いに自由度が高いですので、GMや他のプレイヤーとのアドリブの応酬が楽しいんですよ。即興劇、に近いのかもしれません。
 「Eclipse Phase」のルールブックは、とにかく豪華で、ボリュームも満点。内容も凝りまくっていて、SFの設定集としても凄く楽しめますし、先進的なので、とても勉強になります。
雀部 >  まだ全部は読んでないのですが、すごく細かいところまで作り込まれてますね。まあ全部を覚えている必要はないのでしょうが、ゲームマスターは大変そうですね(汗;)
 片理さんは何回くらいプレイされたことはあるのでしょうか。
片理 >  「Eclipse Phase」は、キャラクターメイクだけの回が一度あって、その後にゲームとして二度遊びました。実は元々はTRPGというものにまったく縁がなくて(汗)。生まれて初めて遊んだのが「Eclipse Phase」ということに。
 ただ、縁はなかったんですけど、ずっと興味はあったんですよ。というのも投稿時代、どうやったら小説を上手く書けるようになるんだろうと色々と調べていた中に「TRPGをやると良い」というのがあったんです。世界設定、キャラクター造形、シナリオ作成。TRPGの中にはその全てがあり、セッションを通してのプレイヤー同士の切磋琢磨は小説の良い修行になる、と。
 ですので、実際に体験できた時は嬉しかったですね。「なるほど、確かに」と思いましたよ。小説でもキャラクター同士の掛け合いって、生身の人間同士のセッションなんです。予定調和なんかじゃなくて、これから何が起こるか、どこへたどり着くことになるのかがお互いにまったく分からない、手探りの旅なんです。
雀部 >  なるほど、そこらあたりは現実世界を模しているんでしょうね。
 105Pに、「エクリプス・フェイズの世界を小説で体験しよう!」ということで、SF Prologue Waveのシェアワールド企画「Eclipse Phase」が紹介されてますね。片理さんは、朱鷺田祐介さんに続いて二番目に多くの短編を書かれていますが「Eclipse Phase」のシェアワールドの短編を書くことは、ゲームをするのとはまた違った魅力があるのだろうなと思うのですが……
片理 >  最初の頃は「Eclipse Phase」の情報や雰囲気や魅力をストーリーの中で自然に紹介できれば、というガイドブック的な部分を意識してました。ですので、想定していたのも本当にごくごくスタンダードなクエストで。
 ただ、だんだんキャラクターたちが一人歩きを始めてきてまして(笑)、ジョニィ船長と相棒のリラという、あの二人のコンビに振り回されて、最近はスタンダードというよりは、あの世界をどう解釈するのかという、自分なりの独自色みたいなものを意識するようになった気がしています。本当に、手探りで冒険している感じです(笑)。
 とにかく設定も膨大な量で、広大かつ多彩な世界ですので、あの全てを一人で書き切れる小説家はいないだろうと思うんです。どの角度から、どの箇所にスポットを当てて、それをどう切り取るのか。そこにはどうしたって書き手のオリジナリティが滲みますよね。
雀部 >  SF Prologue Waveでの企画「Eclipse Phase」でも、作家の方によって雰囲気が違いますし、女性作家の方も居て切り口も違っていて面白いですね。
 ここまで設定が作り込まれていたら、実際に行われたゲームを小説にするとかの試みは行われているのでしょうか。もしくは、PC上で自動的にゲームが進んでいって、それを元にした小説を書くとかは。
片理 >  ノベライズももちろんなのですが、TRPGには“リプレイ”というのがありまして、それをできたらばとか、あと作家何人かで集まって「Eclipse Phase」をプレイしてみて、それをリレー小説形式で発表できればとか、色々とアイデアはこれまでも出ていました。ですが、何しろ日本語版のルールブックが出たばかりですので(汗)。全てはこれからかと。これでこちらも書きやすくなりますんで! ……実は私、恥ずかしながら、外国語がからっきしでして(汗)。それとTRPGのルールブックは英語が堪能な人でも、TRPGに詳しくないとかなり手強いそうですんで、いやホント、日本語で読めるのはとても助かります。
雀部 >  そうなんですか、これからの発展が楽しみです。
 前回のインタビューの際に、“日本SF新人賞と小松左京賞の出身者で『NEO ─Next Entertainment Order─』(次世代娯楽騎士団)というチームを作りまして、今、みんなで何か楽しいことをやれないかと色々と悪巧みをしています”とうかがいましたが、これは八杉先生も参加されている《九十九神曼荼羅【シリーズ】》《夢幻∞シリーズ》のことなのでしょうか。
片理 >  そうですね、元々は「九十九神曼荼羅」という企画で始まりまして、“全作家で同じモチーフを描く”というチャレンジだったのですが、その後“九十九神”の縛りが外れ、「これからは自由に、好きな作品を書いていい」ということになり、《夢幻∞シリーズ》が始まりました。
「九十九神曼荼羅」企画は(NEOの側には)アンソロジーを意識してた部分があったんですけど、実際にやってみたら、平谷さんとか、青木さんとか、八杉さんとか、それぞれに独自の読み味があって、独特の世界を持っている。この書き手たちの場合は、一つに合わせるよりも、一人一人にフォーカスを当てた方が面白くなる、ということになったんだろうと思っています。つまり、企画は第二段階に入った、ということなのかなと。
雀部 >  なるほど、なるほど。特に平谷先生は時代ものの九十九神シリーズをもの凄く書かれてますし。シリーズ化作品もあるし。
片理 >  それと、NEOの方に話を戻しますと、「Eclipse Phase」企画もそうです。「SF Prologue Wave」自体もその一環です。これらは別にNEO限定のものではまったくありませんが、元々私が考えていたことが「今までにしたことのないチャレンジをやっていけば、いつか、次への突破口が見つかるのではないか」ということでしたので、私にとってはこれらもNEOの活動の延長線上にあります。
 要は、もう今までのやり方では通用しない、ということですね。ブレイクスルーは、新たなチャレンジの向こう側にしかないのだろうと考えています。しばらくの間は“トライアル & エラー”の苦しい期間が続くかもしれませんが……。
雀部 >  「デンタルジャンパー」、題名を見て“おおおっ!”と思いましたよ。
 でも、こっち方面の話でしたか。→勘違いした私が悪いんですが(汗; 某Dentist)
片理 >  あはは! そうでしたね、雀部さんのテリトリーでした(笑)。
雀部 >  個人的に一番受けたのは「レギオン・チューナー・ラプソディ」。可愛い天然の女の子って最強ですよね。ひょっとして、片理先生もこういうタイプがお好きなのかなと思ったり(笑)
片理 >  もちろん、好きです(笑)。あの作品は、かなりノリノリで書きました♪
 “九十九神”って、妖怪なんです。唐笠お化け、一反木綿、お化け提灯なんかは全て“つくもがみ”です。年を経た器物などに魂が宿った存在が“九十九神”なんです。粗末に扱った人間には厄をもたらしたりもしますし、大切にしてくれた人には福をもたらしてくれる。どこか妖精のような、中立の存在なんですね。
 ですのでホラーとしても描けるんですけど、ドタバタ喜劇にしてみました(笑)。怨霊どものチャンネル権争いの様子や、天使のような少女との対決の様子。あのいかにもおどろおどろしい表紙と、本文の脳天気さとのギャップを楽しんでいただけたら嬉しいです。
雀部 >  《屍竜戦記》シリーズの続編は、まだ出てないようなのですが、幻狼ファンタジアノベルスの『Type:STEELY タイプ・スティーリィ(上・下)』は、前回のインタビューの時におうかがいしていた“『エンドレス・ガーデン』の執筆が遅れに遅れてしまったしわ寄せで、真っ青になっています”とおっしゃっていた作品ですよね。
片理 >  《屍竜戦記》シリーズの続編、うう、申し訳ありません(汗)。何とか頑張って名前を売って、どうにか形にしたいと思っております(汗)。
雀部 >  お待ちしております(笑)
片理 >  それと、『Type:STEELY タイプ・スティーリィ(上・下)』は、そうです、やっと形になりまして(笑)。
雀部 >  色々なアイデアがてんこ盛りの作品になっていて読み応えがあるのですが、骨格は《エヴァンゲリオン》的といっても良い感じを受けました。この狙いはどこらあたりにあるのでしょうか。
片理 >  他の方からも同様の指摘をいただいたことがあるのですが、実はあの作品を書いていた時、《エヴァンゲリオン》はまだ観ていなかったんです(汗)。どういう作品なのかもよく知らなくて(汗)。
雀部 >  ありゃま、そうだったんですか。当時は、“エヴァ以前・以後”とか“セカイ系”とか良く聞きました。
片理 >  『Type:STEELY』執筆の直接の動機は、単純に「戦闘ロボットものを書きたい」ってことだったと思います。
 ただ、リアルに考えていくと巨大ロボットは色々と難しいので、身長3メートルくらいまでかな、とか。そのサイズだと乗り込むのは厳しそうだから、では脳だけを戦闘用のボディに移植するのかな、とか。だとするとロボットといっても機械の、金属製のではなく、生体部品でできているのかな、とか。人間がそうまでして戦わなきゃならない相手って、つまりは和平交渉や降伏のできない相手というわけで、それはいったいどんな敵なんだろう? という感じで紡いでいって、最終的に「暴走したナノ・テクノロジーに、倫理的リミッターを完全解除したバイオ・テクノロジーで、どうにかこうにか対抗している世界」ができあがりました。
雀部 >  超巨大バイオロボットは、自重を支えられなかったりしそうですし。3mは、妥当な大きさだと思います。それと脳を戦闘用ボディに移植して、非戦闘時には、元の生体の方にリモートアクセスするという設定もなるほどなと思いました。「アニマ・ソラリス」の初代編集長の−卓−さんが、「在宅戦闘員」という在宅で戦う兵士の小説を書かれているんですが、実際問題として伝送時間のロスを考えると、脳はボディと一体化しているほうが戦闘能力は上がりますよね。
片理 >  リモートコントロールだと伝達速度の問題がどうしても生まれますよね。実際の戦闘は百分の一秒や、千分の一秒を競う世界で行われるわけで、それでは勝てない。かと言って兵器を自律させてしまうと暴走の危険がある。というわけで、人間の脳を移植。ただし、来る日も来る日も敵と戦って、命の危険というストレスにさらされ続ければ、誰だって発狂してしまいます。そこで、戦闘用以外の、オフタイムのためのボディも必要だろうと、まぁ、そんな風に発想を転がしてゆきました。
雀部 >  ここらあたりは「雪風」とかホールドマンの「終わりなき戦い」に共通するものがありますね。もはや何のために戦っているかも曖昧な世界。
片理 >  「降参することすらも許されない、絶望の世界」ですよね。その中で、必死に未来を模索する少年と少女の物語。あの作品では、希望、を描きたかったのだろうと思います。
雀部 >  そう言えば前回《屍竜戦記》を“あの物語は希望なんてどこにもない世界の中で必死に希望を模索し続ける人々のお話です”とうかがいましたが、こういう設定が書きやすいとかはあるのでしょうか?
片理 >  “書きやすい”というのとは少し違うのかもしれません(汗)。この辺りの感覚を上手く言葉で表現するのが難しいのですが、“そうなってしまう”という感じです。執筆って、作者にとっては「ライブ」なんです。その時その時の自分というものが、どうしたって入ります。逆に言うと、例えオーダーがあったとしても、何でもかんでもを自由自在に書けるわけではない、ということですね。その時の自分に書けるものしか書けません。以前書けたからと言って今も書けるとは限らないし、今書けないからと言って、この先ずっと書けないとも限らない。ナマモノなんです(汗)。
雀部 >  『終末の海』は核戦争後の寒冷化した地球だし、ちょっと原作者がいるので毛色は変わる『ガリレイドンナ』も氷河期に突入したエネルギー危機の世界の話だし。
 まあ、こういう極限的な世界を舞台にしたら、SFと相性が悪いはずが無い(笑)
片理 >  『ガリレイドンナ』までチェックして頂いて、ありがとうございます(笑)。そうですね。SFやファンタジーにのみ許されるアドバンテージ、なんだと思います、極限的な世界って。……ただ、実は今書いている作品は、舞台が近未来ということもあって、まったく極限的な世界ではないんですが(汗)。すぐそこにある明日の世界、を描いています。なのでまぁ、SFと一口に言っても色々ですね。
雀部 >  それと“新たに書き加えられたキャラクター当て”(なんのことかは、上巻のあとがきを参照して下さい)なんですけど、最初は山脇か舞美あたりかと思ったのですが、戦闘の悲惨さを具現している山脇は外せないし、舞美のパートはそんなに多くないしで、謎探しは降参しました。善騎と凜人とルクミの三人、善騎と綾と高彦も三人、善騎と陸と山脇も三人のトリオということで、これは崩せないだろうと……
片理 >  あの二人のエピソードは、実は元々はあったもので、ただここまで入れてしまうと一冊では収まらないので、プロットの段階で泣く泣く自分で削ったんです。でもその後、作品を上下分冊で出せることになりまして、晴れて復活させたのでした(笑)。ですので、確かに初稿にはいなくて、後から書き加えているキャラなんですけど、今思えば、居るべくして居る二人、ですよね。いやぁ、ちゃんと書けて良かった♪
雀部 >  そっか、短くするために元々あったエピソードを消したけれど、上下分冊になったんで復活したんですね。それじゃ素人の私には全然分かりませんよ〜(笑)
 そう言えば、《夢幻∞シリーズ》の新連作シリーズが始まったんですね。『ミスティックフロー・オンライン 第1話 冒険探偵(1)』早速読ませて頂きました。
 “作・絵 片理誠”とあって、「おおっ!」と思ったのですが、片理さんの前回のインタビューで、「元々は漫画家志望で、持ち込みをしたこともある」とおっしゃられていたのを思い出しました。
片理 >  そうなんです! 『ミスティックフロー・オンライン』では私、小説だけじゃなくて、イラストも自分で書いています! ご指摘のとおりで、「元々は漫画家志望」の部分が今回は役に立ちました(笑)。
 いやぁ〜、色々と大変でして(汗)。イラストを描いて頂けそうな人がずっと見つからなくて、一時はお蔵入りも覚悟してたんですが、何とか世に送り出すことができました(笑)。最終的に「いっそ“イラスト無し”ということでは?」という話になりかけていたのですが、無いよりはまだ自分で描いた絵でもあった方が良いのでは、と思いまして。「芸は身を助く」って言いますけど、ホント、人生、何が役に立つか分かりませんね。
 さっそくお読み頂いて、ありがとうございます!
雀部 >  素人考えだと、ご自分で書かれると頭の中のイメージをそのまま描くことができそうですが、そこらあたりのご苦労はどうなのでしょうか?
片理 >  いやぁ、実際にやってみると「小説家・片理」と「イラストレーター・片理」はだいぶ違いますね(汗)。頭の中で喧嘩ばかりしています。「なんで、マイクを、銀髪に設定したんだッ! 銀髪、描くの、チョー難しいぞ、コンニャラァーーーヽ(`Д´)ノーーー!」って感じです(笑)。でも「小説家・片理」は知らんぷり、みたいな(笑)。
雀部 >  わはは、やはり。
 この挿絵は、PCで描かれたのでしょうか。なにか特別のソフトをお使いになっているとかはありますか。
片理 >  はい、パソコンで描いています。使用しているのは「CLIP STUDIO PAINT」、通称「クリスタ」と呼ばれるペイント系ソフトです。
 「クリスタ」には「PRO(五千円くらい)」と「EX(二万三千円くらい)」の2種類があるんですけど、私が使っているのは「PRO」の方(ただし、公式リファレンスブックとセットになっているモデル。機能が沢山あるので、初めてこのソフトに触れる人は、公式リファレンスブックはあった方が良いと思います)。ですが凄いんですよ、「こんなに安価なのに、この機能?」ってくらいに高機能で、しかも一旦慣れると無茶苦茶使いやすいです。今のソフトは凄いな、って度肝を抜かれてます(汗)。隔世の感ありでした(昔のあの苦労は何だったんだ〜:涙)。
 なので全然「特別なソフト」ではないんです。PCショップやアマゾンで普通に買うことのできる、ごくごく標準的なソフトです。ですが今の“標準的なソフト”は、一昔前の“特別なソフト”をぶっちぎりで凌駕してます。凄い世界です(汗)。
雀部 >  ほんとにパソコン関連の進歩は凄いですね。『ミスティックフロー・オンライン』の次作はいつ頃になるのですか。それと現在の予定では何巻くらいになるのでしょうか。
片理 >  「第1話 冒険探偵(2)」は、予定ですと9月16日に配信になるかと思います。今のところ、『隔月の第3金曜日』、が配信予定日になっております。
 第1話が全3回、第2話が全5回になる予定です。……実はまだここまでしか小説は書けていないのですが(絵を描くの遅くて、どうしても時間が:汗)、構想というか、プロット上では全8話になる予定です。ので、まだまだ先は長いですね(汗)。
雀部 >  挿絵のほうも期待しております。
 『ミスティックフロー・オンライン』は、『エンドレス・ガーデン ロジカル・ミステリー・ツアーへ君と』と若干雰囲気が似てるような気がします。いまのところ、「夜来たる」の世界で太陽を探すクエストと理解してるんで、宇宙規模のイラスト希望です。なんか、我が侭ですみません(笑)
片理 >  『エンドレス・ガーデン』で得た自分なりのノウハウも使って書いていますので、この2つの作品は似ていると自分でも思っています。更にバージョンアップできていたら嬉しいですね。
 『ミスティックフロー・オンライン』のメインクエストのラストビジョンは、私の頭の中にはあるんですけど、自分の画力で描けるかどうか、甚だ不安ではあります……(汗)。私にとってはこの作品自体が本当に冒険ですね。ガッカリ、ってことにならないよう、頑張ります!
雀部 >  今回はお忙しい中、インタビューに応じて頂きまことにありがとうございました。
 《屍竜戦記》続編と『ミスティックフロー・オンライン』全8話、楽しみにお待ちします。
片理 >  こちらこそありがとうございました!
 今、ツイッター(@henri_makoto)をやっておりますので、もし片理の最新情報を知りたい方がおられましたら、是非こちらもご覧くださいませ。
 これからも、よろしくお願い致します!


[片理誠]
1966年生まれ。東京都出身。システム・エンジニアとして会社員生活を経た後、第五回日本SF新人賞に佳作入選し、デビュー。著作は、上記紹介作の他に『終末の海 Mysterious Ark』、『屍竜戦記』、『屍竜戦記Ⅱ 全てを呪う詩』、『エンドレス・ガーデン ロジカル・ミステリー・ツアーへ君と』がある。業界の片隅で細々と生息中! 現在、日本SF作家クラブ会員。
[雀部]
片理さんは、シェアワールド企画「Eclipse Phase」にも11の短編を書かれていて、これもお薦めです。

トップ読切短編連載長編コラム
ブックレビュー著者インタビュー連載マンガBBS編集部日記
著作権プライバシーポリシーサイトマップ