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Author Interview

インタビュアー:[雀部]

「ミューズ叢書<3> 町井登志夫インタビュー:特集『爆撃聖徳太子』 Kindle版」
> 町井登志夫・上田早夕里著
> BCCKS Distribution
> 216円
> 2016.10.3発行
  町井登志夫・著『爆撃聖徳太子』(PHP文芸文庫)の初出は2004年。初版から既に12年も経過している(2016年現在)にもかかわらず、読者の口コミによって評判が広がり、未だにその人気は衰えない。文庫版での解説通り、まさに「傑作にして名作」と呼ぶに相応しい作品である。歴史を題材とした小説の魅力、登場人物や物語の魅力などについて町井氏にうかがった長文インタビュー、48ページ。
『歴女カオルの「良いお金」と「悪いお金」の経済学』
> 町井登志夫著
> ISBN-13: 978-4537258158
> 日本文芸社
> 1400円
> 2011.1.30発行
 父の負債2億円を返済すべく奮闘する女子大生が、投資の神様・バフェットと聖徳太子の言葉に共通点を見出し、社会の現実をあらためて見直すことになるのだが…。小松左京賞作家による、小説でわかる経済と社会の実相。

『DOCTORS 最強の名医』
> 福田靖脚本/町井登志夫ノベライズ
> ISBN-13: 978-4022647115
> 朝日新聞出版
> 800円
> 2013.7.30発行
 赤字経営に悩む堂上総合病院へ赴任してきた外科医・相良浩介。他の医師のオペに遠慮なく口を出し、緊急医療の危険な患者を受け入れ、前代未聞の高度なオペを成功させていく相良にはある秘められた思いがあった…。沢村一樹主演の人気医療ドラマが完全ノベライズ!

『細菌汚染』
> mahru@かにみそP+町井登志夫著/Deinoカバーイラスト
> ISBN-13: 978-4569830193
> PHP研究所
> 1200円
> 2016.7.14発行
 あいつって、むかつかね? いじめ、ダメ! ゼッタイ。だから、感染(うつ)す。希望が丘高校2年生の石灰詩絵美はやさしい家族、仲良しの友人に囲まれ幸せな日々を送っていた。憧れの先輩とも胸キュンな展開があり、高校生活はバラ色のハズだったが…。YOU TUBE ニコニコ動画で累計600万再生突破! かにみそPとDeinoの暗黒コラボ曲をノベライズ! これはボカロ小説を蝕む汚染小説!

『倭国本土決戦 諸葛孔明対卑弥呼』
> 町井登志夫著/寺西晃装画
> ISBN-13: 978-4569763606
> PHP研究所
> 920円
> 2015.5.22発行
 “八門遁甲”を操り、北伐を始める諸葛孔明に対し、魏国が起死回生の策として呼び寄せたのは、“鬼道”を使う邪馬台国の女王・卑弥呼だった。木牛・流馬など、稀代の軍師・孔明によって繰り出される奇策に苦しめられる卑弥呼。そして、孔明が倭国へ向かったとの報せが…。孔明の北伐の挫折と卑弥呼が歴史から消えた謎に迫った、三国志と魏志倭人伝の世界が交錯する歴史エンターテインメント小説。

《婚活!フィリピーナ》
> 町井登志夫著/レイチェル・西,丸山真理絵
> 小学館
> 4320円
全1-20セット(honto電子書籍)

《九十九曼荼羅 デリヘル》
> 町井登志夫著/AZUMOTO絵
> 小学館
> 864円
全1-8セット(honto電子書籍)

雀部 >  町井さんの読者層は、SF系と歴史小説系に分かれているという話は前回うかがったのですが、今でも増刷がかかるほど人気があるとは寡聞にして存じ上げませんでした。
 小野妹子はまあ普通の人なんですけど、エキセントリックな聖徳太子に振り回されて大苦労するという話でしたよね(笑)
町井 >  どうして読んだ人みんなそういう話になっちゃうのかなぁ(笑)
 ちゃんと本の後ろに『隣国を次々に従え、世界帝国への道をひた走る隋帝国。その矛先は琉球、そして朝鮮半島へと向けられた。倭国に攻めてくるのも時間の問題…。この危機に敢然と立ち上がったのが厩戸皇子、のちの聖徳太子である。遣隋使となった小野妹子をはじめ、周囲の人びとを巻き込んだ彼の戦いの行く末は!?』というすごいヒーロー戦記もののあらすじが書いてあるのに。
雀部 >  私の中では、《司政官》シリーズも、“雇われ社長の悲哀”を描いている(亡き親友の言)という認識で、あまりSFを読んだことのない人に薦めるときは、そう言ってます(汗;) で、『爆撃聖徳太子』は“異能の上司を持った部下の苦労話”と言って薦めました。(すみませ〜ん)
町井 >  なぜかそうなるんですね。歴史上小野妹子はとても苦労していますが、まさかそればかりが有名になるとは思っていませんでした。おかしいな。格好いい狙いだったのに。
雀部 >  いや〜、どうしたって普通の読者は、小野妹子のほうに感情移入すると思います(笑)
 町井さんも、「ミューズ叢書<3>町井登志夫インタビュー 特集:『爆撃聖徳太子』」の中で、“島原の乱は、今で言う下請けの格差というやつ。由井正雪の乱は、「派遣切り」無職者が大量に出てしまったため”とかおっしゃっているので、私の説明方法もあながち間違いではないですよね(笑)
町井 >  完全に読者もそれで通ってます。なぜだろうなー。
雀部 >  「ミューズ叢書<3>町井登志夫インタビュー 特集:『爆撃聖徳太子』」の冒頭あたりで、関連書として山岸涼子先生の『日出処の天子』が出てきますが、私も読んでます。(ま、山岸先生の最高傑作は『アラベスク』ではないかと思ってるのは内緒ですが)
 あと『ギャグマンガ日和』は知りませんでしたが、青池保子先生の『イブの息子たち』は大好きです(時代を考えるととんでもないギャグマンガだったなあ。萩尾望都・竹宮惠子・大島弓子・大和和紀先生あたりは、当時のSFファンの基礎教養)
町井 >  わたしは時代がずれたのか、そっちの基礎教養逃しちゃったんですよ。その替わり「ベンハー」とか「十戒」とか「タワーリングインフェルノ」とか50–70年代黄金期の映画が教養になってます。
雀部 >  まあ、ちょっと年齢も違いますし(汗;)
 後書きに“この本は4年周期で動いている。今年文庫増刷だから、2020年は映像化でしょう”と書かれてますが、実写・アニメどちらがお望みでしょう。個人的には、「Thunderbolt Fantasy東離劍遊紀」みたいな人形劇も良さそうに思うのですが。
町井 >  いやぁぁ、何だっていいんですよ。最初は金のかからないものからで、それから4年ごとにレベルアップしていって、最後は何十億円か制作費かけて映画化とか(笑)
雀部 >  CGばりばりの特撮映画になりそうですね。>『爆撃聖徳太子』
 この「ミューズ叢書<3>町井登志夫インタビュー 特集:『爆撃聖徳太子』」で明らかにされている主人公の視点とか、歴史の空白の部分を利用するとかは、『諸葛孔明対卑弥呼』でも同じなんですよね?
町井 >  全く同じです。というか、歴史小説が歴史そのまま羅列なんて絶対あり得ないでしょうし。
雀部 >  それはあり得ない、というか歴史<小説>ではないですよね。
 インタビューの中で、“作者と分身たちは、日本に「帰る場所」はあっても「居場所」はない。”とありますが、度々フィリピンに行かれているのは、そのことと関係ありますか。
町井 >  ありますよーー。日本の息苦しさは本当にどうしようもなくて、この間も電通の女の子が自殺しましたが、年間自殺率が世界ワーストレベルの日本から、アジアでも自殺率最低レベルのフィリピンでは全然空気が逆ですから。
雀部 >  前回、フィリピン人も日本人も人間性はあまり変わらないとうかがったのですが、その自殺率の差はどこからきているのでしょうか。または日本のどこを改善すれば、自殺率を下げることが出来るでしょうか。
町井 >  ずっと昔に書いた日記をそのまま引用しますと、こんな感じです。
「おもしろいから 統計を繰り返し見ている。確かに国別の殺人率と自殺率は相関している。殺戮の国は自殺が少ない。

日本は北欧型社会だ。殺人解析は告げている。日本は北欧、フィンランドとかデンマークとかなどと一緒 殺人は全然少ないが結構自殺が多い。

これと全く逆なのが 内戦国。シリアとか南米とか アフリカ。自殺はほとんどないのに、殺人比率高い。
統計が古くて 正確かどうかわからないが あれほど世間を騒がしているシリア人の年間自殺率は ゼロ。みんな自殺する前に殺されたりするという話もあるが

フィリピンとか、ジャマイカが内戦型国家

世界の大半の国家はそこそこ殺人もあるがそこそこ自殺も多い。タイも、アメリカも、ヨーロッパ先進国も。
けれど日本ほど自殺していないという意味ではいい国なのか。しかし日本人から見れば圧倒的に殺人事件が多いのはどうなのか。
日本人が多く住んでいる タイだが 自殺こそ日本の半分だが 殺人は日本の17倍。けれど それでもアメリカ合衆国レベルである。治安はアメリカ並みというわけだ。

同じアジアでも フィリピンは全然違う。自殺は日本の1/6 殺人は50倍。かなりひどい

自殺国家日本よりも 自殺が多く、しかも殺人も圧倒的に多いとなればそれはもう「すむな。今すぐそこから逃げろ」国家となる。
筆頭はなんと言っても ロシア。あと、笑ってしまうが 韓国が それにあたる」
雀部 >  自殺率低下は殺人率増加とバーターですか。それはなんとも(汗;)
 ロシア・韓国は大変ですな。
 さてこの対談で、引きこもりならぬ「外こもり」という興味深い言葉が提案されてますが、この「外こもり」現象は、町井さんご自身の人生にどういった影響を及ぼしているのでしょうか。
町井 >  『ゴミマリア』でつかった『バタイ』『マラキンペラ』とか、実はあれ全部フィリピン語なのですねーー。わかるひとにはわかるというやつ。ふぃりぴんにいかなければ『ゴミマリア』はもちろん『電脳のイヴ』はなかったのです。読めば一目瞭然。と言うことは『外こもり』が作家の元です。
雀部 >  ということで、今月も引き続き“日本SF新人賞と小松左京賞の出身者で構成された『NEO ─NextEntertaiment Order─』(次世代娯楽騎士団)”の中から、町井登志夫先生に著者インタビューをお願いすることになりました。
 町井先生、前回のインタビューからもう十年経つんですね。いかがお過ごしでしたでしょうか。
町井 >  いやあ 本当に10年ですか。あっという間ですね。
 実は、フィリピンに行っていて返事遅れましたごめんなさい。こちらはマイペースでやっています。
雀部 >  ほんとに過ぎてみればあっという間ですね。特に最近は時の流れがひときわ速くなったような気がします(汗;)
 おっと、フィリピンに行かれていたとは。最近のフィリピン情勢はどうなのでしょうか。ドゥテルテ大統領の新政権、1カ月で麻薬容疑者400人射殺。恐れなした57万人が出頭したと聞きましたが。
町井 >  短い旅行なので実はそんなに深くは探れないのです。が 表面的には特にいつも通りのフィリピンだったとしか言いようがないですね。もっと長く取材なんかができればいいなといつも思っています。
雀部 >  中国にもけんか腰だし、国連にもたてついてるし、先日はオバマ大統領に対して暴言騒ぎもあって、なかなか大変な大統領みたいですね。端で見ているぶんには面白いけど(笑)
 先日、フィリピン出身の女性と知り合う機会があり(別れる際、カミさんとお互いにハグしてました)、それで町井さんの《婚活!フィリピーナ》シリーズを思い出したというわけです。このシリーズは、ほぼ作品ごとに主人公のフィリピン女性が違うんですが、書き分けが大変なのではないでしょうか。それともモデルが居るのでしょうか?
町井 >  というわけで 先日もフィリピンから帰ってきたばかりですが、当然こんなのモデルというか実話が先になければ話続きませんよ。全部実話ですと大見得を切りたいところですが小道具の設定とかを読めばわかるとおりかなりフィクションです。とはいうもののモデルがなければとても話は作れないので、中には「ほぼ実話でした」と言い切れるエピソードもあったりします。毎回ネタを探しにフィリピンに行ったり話を聞いたりしています。
雀部 >  納得です。主人公の妹さんが主役級に登場するエピソードがあるのですが、実在の妹さんがモデルとかはないですか?
町井 >  わたしの現実の妹は若くして自殺したので、モデルにしようがなく、全然架空の存在です。
雀部 >  えっ(絶句)。それはなんとも……。ご冥福をお祈りします。
 ところで、フィリピンには年に何回くらい行かれるのでしょうか?
町井 >  そんなには。フィリピンの留学から戻ったのが1991年げんざいは2016年なので25年間に数えて15回くらいは行きました。普通の人に比べたら行ってますが平均すると一年に一回もない。
雀部 >  ほぼ一年おきくらいのペースですね。
 いま流行の格安航空だとフィリピン往復だといくらくらいかかるのでしょうか。
町井 >  今は、安いものはめちゃくちゃ安いですよ。わたしはキャンペーンだとかなんやかやで片道、800円とかのマニラ便を見たことがありますが、そんなのには乗りません。
 日本では決して報道されませんが、よくあるニュースの一つを下に引用します。

 これは当事者たちのブログです。

「*****航空がやらかしてくれました。急なフライトキャンセル。帰国便変更手続きだけでホテル手配せず。なんとかホテル探してチェックイン。帰りは5日後。
さすがLCCですかね?普通邦人は困ります。しかも日程が5日後とは、普通の会社員ならアウトです!.

対応最悪。日本側とフィリピン側で言う事が違う。責任のなすりつけあいしてるし 日本側の電話がすぐ切れて話しにならない。

カスタマーサービスに30回以上は電話してるけど都合の悪い話になると途端に電話が切れます。

とにかく一切の対応無いです。宿泊先手配すらありません。約180人が何の対応もして貰えず困ってます。対応は全て帰国後で会社基準の対応だそうです。」


 こんなのばっかりなのに、日本では格安航空の利便ばかりが報道されるのは政治的になんかあるとしか思えない。
 わたしはだから大手だけです。実際、わたしも乗れなかったときもあったんですがすぐに当日の別の航空会社を手配してもらえたこともありました。
雀部 >  やはり安いところはそれなりにリスクが多いんですね。
 前回のインタビューで“フィリピン人と日本人は、心理学的にも遺伝子的にも同じ”だとうかがいましたが、女性はどうなんでしょうか。《婚活!フィリピーナ》を読むと、フィリピン女性のほうが、たくましくて細かいことは気にしないような感じを受けたのですが。
町井 >  小説のフィリピーナはあくまで 「外人と関わることに興味あり」のフィリピーナですから一概には言えない感覚です。というのは日本人でも 「外人と結婚しよう」という女の子は細かいこと気にしていたらできないでしょ。たくましくもなろうし。向こうにも日本と同じ一億の人間がいるんですから色々いますよ、という感じです。
雀部 >  そうですね。よく考えれば、日本の外人と結婚しようと考えている女の子のことは全然知りません(汗;)
 もう一つの“九十九神曼荼羅シリーズ”の【シリーズ】デリヘルなんですが、これも実地取材をされたのでしょうか。
町井 >  あれもネタがなければ書けない話で、偶然デリヘルの店長と知り合いになったんですよ。
 「なんかおもしろいネタくれ」といったら飲みながらぺらぺらしゃべってくれました。
 だからあのシリーズばかりは堂々と「全部実話ベースです」と言い切れる。もちろん個人名がわからないように神様をくわえて小説と化しましたけどね。
 で、どうなったかというと店長さんは結局うまくいかなかったらしく夜逃げしてしまった。
 ということでネタをくれる方がいなくなってデリヘルの方も店がなくなってしまったので、あのシリーズは中断というか、まぁ終わりです。あと一作くらいはかけるネタ記憶にありますが、まぁ書かない気がします。
雀部 >  そうですか。なんかありそうな話というか、現実の元ネタがあったからなんですね。デリヘルの取材記事みたいで面白く読ませていただきました。
 《婚活!フィリピーナ》と《デリヘル》シリーズ、主人公と九十九神が固定されてますが、これにはどんな狙いがあるのでしょう。
町井 >  デリヘルのほうはなにしろ聞いた実話そのままなので主人公は固定しなければどうしようもない。そうなると神様固定。
 婚活の方もその流れのまま書き始めたので固定です。というか女の子の方が毎回くるくると変わるのに主人公までが変わってたらどうしたらいいかわからなくなっちゃう。あと神様が『言語の神様』なのでこれは変えようがない。
雀部 >  よく考えるとそうですね。他の作家さんの《九十九神曼荼羅シリーズ》では、主人公や九十九神が毎回違う作品も多いので、ちょっと疑問に思ったのでした。
 電子書籍つながりでうかがいますが、電子文藝誌「アレ!」掲載の「消失! というか沈没 w」笑わせてもらいました。小松先生の『日本沈没』と筒井先生の「日本以外全部沈没」のオマージュ。なんかもう破壊力が強烈すぎて(大爆笑)
 町井さんには、こういう路線の作品ももっと書いて欲しいのですが、ご予定はあるのでしょうか(出版社の依頼待ち?)
町井 >  あんなもの、依頼がなきゃ書けませんよ。商業的に問題ありすぎでしょう。依頼、お待ちしてまーーーす。
雀部 >  読者も、依頼をお待ちしておりま〜す。
 前回のインタビュー以降、電子書籍以外では『歴女カオルの「良いお金」と「悪いお金」の経済学』('11)『DOCTORS 最強の名医』('13)『細菌汚染』('16)と上梓されてますが、これらの本は出版社の方から依頼があったのでしょうか。
町井 >  『倭国本土決戦 諸葛孔明対卑弥呼』という本も出していますよ。これは『諸葛孔明対卑弥呼』の13年ぶりの完結編です。
雀部 >  『倭国本土決戦 諸葛孔明対卑弥呼』って……
 げっ、出版社を変えての再販かと思い、見過ごしてました(汗;)
 早速注文して読みました〜。
町井 >  ありがとうございまーーーーす。文庫化に当たり、孔明卑弥呼の決着ついていないので書くと言うことになりました。
雀部 >  そうなんですね。本作も決着ついたようでもあるしついてないようでもあるし。
 というか、諸葛孔明、日本に来ていたのか(笑)
 両巨頭の技比べ読み比べ合戦が凄いし、最後の巨大な地図上で総ての決着を付ける仕掛けは読み応えがありました。
町井 >  話が広がったので、もうアレしか決着つけようがなくって、地図バトルになったんです。個別にやっていたらもう一冊いりましたから。
雀部 >  地図バトル、命の無駄遣いが無くて、戦争は全部この形式でやって欲しいものです。
町井 >  えっと経済を扱った『歴女カオル』は自分から書きたいと言いました。その頃『もしドラ』が流行っていたので、その形式で自分の知っている経済というものを関連させて書きたかったというのがありましたので。
 他は、出版社の人とやりとりをしている間に、依頼という形になったものですね。
雀部 >  『歴女カオルの「良いお金」と「悪いお金」の経済学』は、『もしドラ』が経済書なら、この本も経済書なんだと思いますが、お金儲けに役立つという毛色の本ではないですよね(笑)
町井 >  まさかアレで本当に金儲けしようという方はいらっしゃらないと思いますが(笑)
 ただ色々経済社会について知り始めたときに書いたので、今は少しばかり後悔の残る本ではあるのです。今、書けばもっとお金や個別の株の動きや、中国や世界経済についていっぱい書くことができたのに。あのときのぼくはあれだけしか書けなかった。
雀部 >  経済書には全く疎いのですが、歴女が経済学について語るという視点がユニークに感じて面白く読めました。続編も期待してます。
 『DOCTORS 最強の名医』は、TVドラマのノベライズなんですね。残念ながらTVのほうは観てないのです。主人公はちょっと壊れているけど、基本的に悪い人が居ないので心地良く読めました。野望とか、病院内の人間関係とか、まさにありそうで面白いです。
町井 >  ドラマの方は好評らしくて『DOCTORS2』『3』まで放送されています。続きの仕事が来ないかと期待しているんですが、まだ来ません。
 主人公を食って、敵役の医師の怪演で見せるドラマですね。ワンクールで8話。約8時間を一冊にまとめるに当たり、やはり取捨選択が多かったですね。主人公のからみ以外は流したり、かといってオペシーンで見せるドラマだからそれは手を抜けなくて調べて書き込みを増やしたりして作りました。
雀部 >  オペシーンは読み応えありましたよ。
 『細菌汚染』のほうは、元はボカロの有名曲なんですね。こちらも知らなかったので、慌てて視聴しました。う〜む、最近はこういった曲も流行るのか。ノベライズのほうも文体はリズミカルですよね、暗いけど(笑)
町井 >  依頼が来たときはもうキャラクターもあらすじもできたものが来たんですよ。後はぼくは歌の世界を生かすために歌詞をちりばめて文章を書いていった。
 今まで書いた本の中で一番、職人仕事をしたっていう感覚です。「DOCTORS」の時は画面と脚本から自分で作る感覚でしたけれど、『細菌汚染』はできたものを料理した感覚です。もと歌が暗いから、暗くするのが正しいです(笑)
雀部 >  確かに、元歌の暗くてサイケ(古いか^^;)な感じがよく出ていると思いましたよ。
 もう一つうかがいたいのですが、町井さんのやられているメルマガ、最近は巨大ロボットアニメの系譜を取り上げられていて面白いですね。私は、当時もう大学生だったのですが、毎週見てました。当然、『マジンガー』から『UFOロボ グレンダイザー』も(笑)
 『宇宙戦艦ヤマト』も面白かったんですが、マジンガー系列のほうが、ロジスティクスの面も描写されていて、お気に入りでした。
町井 >  ロボットアニメについてしゃべり始めたのは2016年の3月頃からで、それまでは007シリーズについて好きなことをしゃべっていて、その前はサバイバル映画やマンガについて好きなことをしゃべっていました。その前はゾンビ映画だったような。
 とにかく自分の好きなことを好きなようにしゃべりまくるので、こんなのをメルマガにして飛ばしていいものかと思いつつ、題材自由なので勝手やっています。
 今回のロボットアニメについても「マジンガー」「ガンダム」「エヴァンゲリオン」と語っていって、「進撃の巨人」までしゃべったら別の話題に移ろうかと考えています。
雀部 >  以前のメルマガのログも読めるようになっているので、全部読ませていただきました。 けっこう嗜好が似ているんで、楽しませていただきましたよ。
 さて、最後に近刊とか現在執筆中の本がございましたらご紹介下さいませ。
町井 >  『爆撃聖徳太子』がどうやら話題になってくれて増刷かかっているので、古代史の企画を出したりしているのですが、まだ返事来てません。
 別に古代史ばかりやりたいわけじゃなくて、現在までのぼくの書いたもの見てくれれば全然めちゃくちゃなのわかると思うので、色々やりたい気があるのですが注文待ちですね。あと、たらたら続いている《婚活》シリーズもなんとか30作で完結目指していまーす。
雀部 >  久しぶりのインタビュー、ありがとうございました。
 古代史企画、とんでも企画、その他SF企画、読めるのを楽しみにしています。


[町井登志夫]
1964年生まれ。南山大学教育学部卒業。96年、『電脳のイヴ』で第3回ホワイトハート優秀賞を受賞。2001年、『今池電波聖ゴミマリア』で第2回小松左京賞を受賞。
[雀部]
電子書籍は、古本として売買は出来ないけれど、老眼の私は50インチの大画面で読んだり、スマホに詰め込んで旅のお供にしたりしてます。PCとスマホ間でどこまで読んだかが共有できるのもちょっと便利かも。クルージングが台風で遅れた時も、読む本には困らなかった(笑)

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