表四側の帯の画像です。
なんと四社の合同の他社の本の宣伝も載せるという驚きの企画!
でもって、以下の8冊が、平谷美樹先生の2017年度出版書籍です(『でんでら国』は上下巻なので2冊にカウント)
『江戸城御掃除之者!』2月
『鉄の王 流星の小柄』4月
『草紙屋薬楽堂ふしぎ始末 絆の煙草入れ』5月
(『でんでら国』(上・下)文庫化)6月
---------以上が“怒濤の連続刊行!”企画-----------
『雀と五位鷺 推当帖』10月
『江戸城御掃除之者! 地を掃う』11月
『草紙屋薬楽堂ふしぎ始末 唐紅色の約束』12月
江戸城の掃除を担当する御掃除之者の組頭・山野小左衛門は、上司から極秘の任務を命じられる。それは男子禁制の大奥の掃除。七代将軍徳川家継の生母である月光院付きの御年寄・音羽が何年も局に籠もり、局が汚部屋と化しているらしい。
精鋭の配下六人を集め、大奥へと乗り込むが、そこには大奥女中による防衛線が築かれていた……。
時は宝暦四年(1754)、鉄屑買いの鉄澤(さなき)重兵衛は下野国の小藩の元・鉄山奉行だった。藩が改易になり、仲間と江戸に出てきたのだ。その日、飴を目当てに古釘を持って来た顔馴染みの留松という子が、差し出したのは青みがかった銀色の光を放つ一振りの小柄だった。それは、希少な流星鉄(隕鉄)を使った鋼で作られていたのだ。しかし、その夜、留松の一家は惨殺され、重兵衛たちは否応なく事件の渦中へ……。
「気の強ぇ女が二人――こいつぁ危ねぇ組み合わせが出来上がっちまったな」
時は文政。江戸の通油町にある本屋、草紙屋薬楽堂の面々に、曲亭馬琴に認められた武家の女、只野真葛が加わった。売出し中の女戯作者・鉢野金魚(はちのきんとと)と貧乏戯作者・本能寺無念(ほんのうじむねん)、もと御庭番の読売屋・北野貫兵衛らとともに、真葛は怪異がらみの噂と企みの背後の闇を探り始めるが……。
時は幕末、陸奥国八戸藩と南部藩に挟まれた小さな国、外館藩西根通太平村。大平村には、60歳になると村での役割を全て解かれ、御山参りをする習わしがあった。それは、食い扶持を減らすための姥捨ての旅とも囁かれていた。しかし、その実態は……。
山に捨てられた老人達が、理想の村を作って生活を営む、そんな国を暴こうとする代官とそれを守ろうとする農民たちのあっと驚く攻防戦が始まる。
家康が幕府を開いて三年目の慶長十一年。江戸はかつてない賑わいにあった。
傾城屋(遊郭)の五位鷺太夫は江戸で三本の指に入る美人の売れっ妓である。その妹女郎の雀はまだ客をとらず、もっぱら五位鷺の身の回りの世話をしている。ある日、呉服屋の主が辻斬りに殺められた。五位鷺は雀に事件を調べるよう命じる。五位鷺は、年寄や奉行が事件について話し合う寄合や奉行が事件について話し合う寄合衆にお茶汲みとして参加し、そこで自分の推当(推理)を披露することで、実力者に気に入られようと企てていたのだが……。
平谷さんは、江戸時代のちょっとニッチな役職とか商売を題材にした小説を書かれていて、前回のインタビューの時にも話題にのぼった《江戸城御掃除之者!》シリーズとか《草紙屋薬楽堂ふしぎ始末》シリーズがありますが、特に2017年度には文庫本の帯に、“四社合同企画開催”とあり驚きました。何かなと思って裏表紙の方を見たら、“怒濤の連続刊行!”企画だったみたいですね。
角川文庫に徳間文庫に、だいわ文庫と小学館文庫の帯にも他社の本の紹介が付くんですね。なんか凄い快挙です。(2月, 4月, 5月, 6月発売。他にも出ているので「平谷美樹先生、2017年度の出版書籍」で紹介してます)
2016年に書いた原稿が全部、「今春刊行」という希望だったので、同じ月に何冊も出ては困るということで相談したら、こういうことになりました(笑)
なんとそういうことだったんですね! 出版界のことはよくわかりませんが、滅多に無い事だろうということはわかります!
ニッチな役職の話に戻りますが、「御掃除之者」を『江戸幕府役職集成』で見つけたときに、同じ頁に《江戸城御掃除之者!》シリーズに登場する「黒鍬者」についても記述があり、これだこれだと喜びました(笑)
「御掃除之者」と「黒鍬者」は管轄が同じで、禄高も同じくらいですので、お互いにライバル視しているというのは実際にありそう(笑)
「黒鍬者」も御掃除を担当する場所があるので、絡めれば面白いだろうなと思いまして(笑)
なるほど(笑)
舞台が大奥というのも着眼点が良いですね。大奥ものの番外編として、二時間ドラマにしても面白そうです。
御掃除之者という役職があるということを知った瞬間、大奥の話2本が出来上がりました(笑)
なんと素早い!
「御掃除之者」は江戸城は当然として、浜御殿奉行とか吹上奉行の配下の役職もあるんですね(3巻目の舞台にもなっている)。
《御掃除之者》シリーズでは、大奥絡みの話も面白かったのですが、一番好きなのは将軍家の御書物蔵から消えた三冊の本を探す「楓山秘閣御掃除御手伝の事」です。インターネットで様々な情報にアクセスできる現在では、若い人たちにとっては落語の郭話と同じで中々実感がつかめないかも。だからこそ、こういう形で残っていくのは大事なんじゃないかなと感じました。
幕末物はなかなか売れないので、さて、どうなりますことか……。
はあ、幕末ものはセールス的にはダメなんですか。難しいものですね。
《鉄の王》シリーズは、大変面白く読ませて頂きました。久しぶりのSF的設定もありでしたし(笑)
息子が製鉄関係の会社に勤めていて、その会社の敷地内には踏鞴製鉄の展示があります。販売所もあって社員は安く手に入れられるのですが、息子が青紙という二番目に高い鋼の包丁を買ってきてくれました(一番高いのは白紙ですが、どうも受注生産らしい)踏鞴衆は、確か沙棗にも出てきましたよね。
今回は久々のSF設定。とはいうものの「SF色は薄めにお願いします」と言われたので、設定のほとんどは隠しています(笑)
ありゃま、そうなんですね(汗;) 残念無念。
鉄で不死者とくれば、小松先生の『日本アパッチ族』かとちらっと思いましたが(笑)
夕霧ちゃん、健気で可愛いです。本家筋は、雰囲気的には猖獗兵(こっちは黒いけど)を想起させましたぇ。まあ超然としていて他者から操られることは無いんだろうけど。
3巻目(2018/12)の最後では、そもそもの発端というか徳川家の出自が語られますが、なんとそういうことだったとは。
覇者と鉄は密接に関わっていると思うんです。鉄を制する者が世界を制する――。近代になるまでそうだったんじゃないかなと。
はい、『銃・病原菌・鉄』(ジャレド・ダイアモンド著)でも読みました。
《草紙屋薬楽堂ふしぎ始末》は、女戯作者・鉢野金魚と貧乏戯作者・本能寺無念と仲間達が解決するシリーズなんですが、《百夜・百鬼夜行帖》シリーズや《ゴミソの鐵次 調伏覚書》シリーズとは趣を異にして、一見したところ怪異譚に見える事件がじつは合理的・科学的な説明が付くという展開が読みどころですね。
前回、「オカルトが入る話の方が書きやすい」とうかがったのですが、《草紙屋薬楽堂ふしぎ始末》での合理的な推当を生み出すにはご苦労されたのでしょうか。
【薬楽堂】の場合、まず「何がおきるか」というものを設定し、それに対する合理的解釈を考えて行きます。あまり強引な解釈はできないので、解釈の選択肢は少なく、だから推当を考えるのはさほど難しくないのですが、読者にすぐばれないように伏線やら構成やらをいじる必要があって、それが大変だったりします。
オカルトが入ると、出来事の解釈の選択肢が増えるので、展開の選択肢も増えて、その中から選んでいくのでわりと楽なのです。
なるほど。昔の人が理解不能な事件が起こると、物の怪とか幽霊のせいにしたがったのも同じですね。
『でんでら国(上・下)』は、『大一揆』と根底に流れる信念は同じように感じました。「百姓をなめるんじゃねえぞ(怒)」と。単行本は『大一揆』より数年前に出てるから、こちらの方が先輩か。ちょっとユーモアも入っていて、時代小説ファンじゃなくてもお薦めだし、SFファンが読んでも面白い。
特に敵役として登場する武士の平太郎の存在は出色ですね。身につまされました(泣;)
『でんでら国』、そんなに発見され難いのか?と思ったら、岩手県は岡山県の約二倍の面積があって、広さは北海道に次いで二位なんですね。侮れなかった(笑) 『でんでら国』のストーリー展開において岩手県の面積の広さが関係してますよね?(笑)
岩手は広いですよ〜。面積の八割以上が山林ですから。現在なら衛星写真を解析すればすぐに「でんでら国」を見つけることができるでしょうけれど、江戸時代は歩いて山の中を探さなきゃならないですからね。まず見つかりませんよ。
ただ、農業で食料を生産しなければなりませんから、ある程度の場所を仮定できたら平太郎のやった方法で、探し出すことは可能です。
平太郎がやった方法は、5月頃、里川でフライフィッシングをしていると、“あの状態”になって釣りができなくなるという出来事から思いつきました(笑)
“*掻き”かぁ。確かに可能ですね。
もう一冊、“四社合同企画開催”には入ってないんですが、『雀と五位鷺 推当帖』も出てます。題名に「雀」が入っていたのでビックリしました。最初に作家の「雀野日名子」さんの名前を見た時くらい驚きました(笑)
たぶん主人公は“雀”ちゃんだと思いますが、五位鷺のお姉さん、美人で頭の回りが早く、しかも気が強くて性格が悪いとなれば、SFファンの大好物(笑) とても面白かったです。ラノベには良くありそうなキャラ設定なんですが、ストーリー展開を考えてキャラの性格付けをされているんでしょうか?
たぶん、わたしの悪い癖だと思うのですが、「まっとうな主人公」を書きたくないというのがありまして(笑)性格の欠点を極端に書きすぎるんですよね。
もっと判りやすい性格設定の方が取っつきやすいんだろうなと思います。
極端な性格している方が読者受けするからだと思ってました(汗;)
ラノベなんかでは、わざと極端に振った性格の主人公とか多いですし。
キャラの性格付けはテーマとストーリーから考えます。あとは、シリーズ物かどうかとか。
実在の人物を扱うときには、「定説」とされているものを頭に入れておきながら、「不自然なくひっくり返す」ことを考えます。【柳は萌ゆる】の楢山佐渡がそうですし、【大一揆】の三浦命助もそうです。
楢山佐渡は、「武士の鑑」という評価でしたし、三浦命助は「正義のヒーロー」的に語られる事が多かったのです。
その「不自然なくひっくり返す」のがキモですよね。