アインシュタインの予言から100余年、謎だらけの天体の秘密に迫る。ゼロからわかるブラックホール特別講義! すらすら読めてブラックホールの謎と不思議がよくわかる!
【序章】ブラックホールが“視えた!!”
【第1章】ブラックホール、知ってるつもり!?
もし太陽がブラックホールになったなら…
【第2章】ブラックホールはどんな天体か?
アインシュタインが一般相対論で予言したこと
【第3章】ブラックホールはどこに居る? いくつある?
発見の歴史と新たな謎
【第4章】ブラックホールはどう視える?
光り輝くブラックホールのさまざまな姿
【第5章】イベントホライズン望遠鏡がとらえたもの、とらえられなかったもの
実際に視えたブラックホールと光子リング
【終章】ブラックホール未来授業
ブラックホール直接撮像の意義と今後
大和書房から出版された福江先生の著書の書影と詳細は別ファイルに。
別件の著者インタビューで、大和書房の長谷部智恵さんとちょっと知り合いになったところ、昔福江先生とお仕事をされたことがあるということで、チェックをしたら福江純先生の『90分でブラックホールがわかる本』が出ていたではありませんか(汗;)
気が付くのが遅れてしまい申し訳ありません。今回もよろしくお願いいたします。
お久しぶりです。
長谷部さんとは『やさしいアンドロイドの作り方』(1996年)以来、もう四半世紀(笑)にわたって、何度も楽しいお仕事をさせていただいています。『90分でブラックホールがわかる本』も、その縁で、出していただけた本です。では、よろしくお願いします。
ということで、長谷部さんにもご参加頂けることになりました。
こちらもよろしくお願いいたします。
はい、お声がけくださりありがとうございます。よろしくお願いいたします。
『やさしいアンドロイドの作り方』から『90分でブラックホールがわかる本』まで、後書きには必ず長谷部さんへの謝辞が書かれていましたのでお声がけしないわけには(笑)
女性目線・文系目線からのアドバイスもありがたかったとも書かれてありましたが、編集者として特に気をつけられていることは何でしょうか。
私は科学ものやSF的なものに興味はあるのにハード面がからきしなので、ひそかに「文系のための科学書シリーズ」というキャッチフレーズを胸に、自分のような文系読者も楽しく読めてよくわかる―または少しはわかる(笑)―本を、という気持ちでSFやアニメに造詣の深い福江先生にご執筆をお願いしていました。
福江先生にはお原稿をいただくたびに、編集者としてというよりは文系読者代表として、難しいところを難しい、わからないところをわからない、と、四半世紀にわたり申し上げ続けてきた……気がします。
文系にもあるんですよ、相対性理論をわかりたいとか、ブラックホールのことをもっと知りたい、という静かな願いが(笑)。
頼もしい文系ですね。まあ、大学受験時の単なる区分けですから、人によって色々なパターンがあると思います。私なんかは、国語・社会で点を稼ぐ国公立の理系受験タイプでしたから(汗;)
福江先生が後書きに書かれているようにマンガを導入したのも良いですね。やはり取っつきやすいと思います。孫は小六ですが、中学になったら『科学の国のアリス』や『90分でブラックホールがわかる本』を読んでやろうと思っています。
ありがとうございます。ぜひお孫さんにおすすめください!
『アインシュタインの宿題』『科学の国のアリス』は、カバーの立体を作ってくださったモリナガ・ヨウさんがマンガも描いてくださり、『90分でブラックホールがわかる本』では、カサハラテツローさんが福江先生も登場するマンガを描き下ろしてくださっています。
そうなんですね。一貫して見てわかりやすい読みやすいという路線には大賛成です。
「カバーの立体」って?と思って奥付を見ると“オブジェ・挿画・図版 モリナガ・ヨウ”とあって、表紙の画だと思っていたのはモリナガさん制作のオブジェの写真だったとは(気づいてなかった(汗;))
ググったらお二人とも著名な方なんですね。最近、装画の方の名前を検索すると「あぁぁ。気が付かなかったけど、持ってる本がいっぱいあるぞ」状態になってます(汗;)
作者の方から「可能だったら**先生にお願いできたらうれしいです」とかの要望が無い場合はどうやって決められているのでしょうか?
モリナガ・ヨウさんは、本のイメージに合った立体を作っていただけるに違いない、マンガをお描きいただけるに違いない、と思い、福江先生のご要望とかではなく私から提案してお願いしています。モリナガさんに立体をお願いしたのはこのときが初めてです。以前からもお付き合いがありましたが、お受けいただけ光栄でした。どうして依頼したかと改めて問われますと、、SFとか理系のスピリットやニュアンスのようなものをお持ちというか、親和性があるかただったから、でしょうか。
カサハラテツローさんは、福江先生がご推薦くださいました。やはり決め手はSFスピリットでした。こちらもお受けいただけとても有難かったです。
長谷部さんが書かれているとおりですね。一般向けの書籍のイラストは非常に重要で、ジャケ買いとまでは行かなくても、書籍の内容をイメージ付けるものです。モリナガさんやカサハラさんにイラストを描いて頂けたのは、大変な僥倖だと感じています。
そういえば、カサハラさんの描く福江先生のイラストは良く似てますね。
昨年なんかブラックホールに関する講演を見たなぁと考えていたら、地元のCATV放映の「岡山天文博物館60周年記念『電波×光の最新天文学』―水沢と浅口からのぞく宇宙―」という番組でした。
著者インタビューでもお世話になったことがある福江先生の教え子で岡山天文博物館館長の粟野諭美先生がMCをされてました。
講師がお二人で、国立天文台ハワイ観測所岡山分室室長の泉浦秀行准教授と、国立天文台水沢VLBI観測所所長の本間希樹教授だったんですよ。
それはそれは、泉浦・本間両巨頭の贅沢な講演だったんですね。粟野さんは教え子というより仕事仲間とか飲み仲間に近いですかねぇ。いずれにせよ、“長”がつく職階なので出世頭ですね(ぼく自身はずっと平のままですが;;)。
ということで、粟野先生お久しぶりです。
非常に遅れて申し訳ないですが、岡山天文博物館開館60周年おめでとうございます!
お久しぶりです。このたびはお声かけいただき、ありがとうございます。
そして、お祝いメッセージもありがとうございます!
無事、還暦を迎えることができました(笑)
おおっと、そんな記念年だったんですね。
それはおめでとうございました。
えっ、なんと。『最新 宇宙学』の著者インタビューをさせて頂いたのが18年前ですから、月日の経つのは早いものです。ちなみに私は古希になってしまいました(汗;)
ひとごとではないです;シクシク
私もです(シクシク)。もう岡山に来て20年以上が経ちました。本当に早いですね。
館長業務・その他業務ご苦労様です。
最近天文台方面に行ってないので知らなかったのですが、リニューアルしてとてもカラフルになったんですね。
はい、前は真っ白な壁だったのですが、このたびのリニューアルでイメージを一新しよう、ということで、広島出身のアーティスト・SUIKO氏にデザインしていただきました。宇宙(空間)と時間がテーマで、時が経つにつれて、味わい深いデザインだなと感じています。
188cm望遠鏡では、太陽系外惑星系の探索と探査をされているとうかがったのですが、3.8mのせいめい望遠鏡は現在どのような観測をしているのでしょうか?
せいめい望遠鏡の大きなテーマは、「(ガンマ線バーストなどの)突発天体」 「スーパーフレア」「太陽系外惑星」で、それぞれの観測をすすめているところ です。直近では、昨年12月に、若い太陽型星で発生したスーパーフレアに伴って、巨大フィラメントが噴出しているようすを初めて捉えた、というプレス発表が話題になりました。
もう一昨年になりますが、口径と追尾能力を生かして、いち早く「はやぶさ2」と「帰還カプセル」の撮影にも成功しています。
京都大学の3.8m望遠鏡のページに紹介がありました。「直接法の科学的意義」の解説もあり、分かりやすいですね。
TVで「のんびりアロマプラネタリウム」が紹介されていて、へぇ〜っと思ったのですが、岡山天文博物館のプラネタリウムは、どういった特徴があるのでしょうか。
アロマいいですね。
当館のプラネタリウムは、2018年3月の施設リニューアルで、最新式の光学式投映機「CosmoLeap∑」に更新しました。「夜空に輝く恒星の美しさ」にこだわって開発された投映機で、当館の投映機はその1号機です。
超高輝度LEDが採用されているので、星がとても明るく自然で、かつ空が暗いのが特徴で、本物に近い星空を体験できます。
またデジタル式投映機も更新され、ドーム全体に映像を映し出す全天周映画も上映しています。
3月12日(土)〜6月5日(日)は、「宇宙のオアシスを探して―奇跡の星への旅―Music by 葉加瀬太郎」というのを上映するんですね。
はい。系外惑星がテーマで、現在見つかっている太陽系外惑星の環境を巡りながら、宇宙に興味津々のロンドンブーツ1号2号の田村淳さんと足立梨花さんと一緒に、新しい系外惑星を探す旅に出かけよう!という番組です。
音楽は葉加瀬太郎さん!なので、壮大な音楽と星空のコラボを楽しめます。
中四国初投映です(笑)
実はプラネタリウム室もプチリニューアルしまして、、、
雰囲気の変わったプラネタリウム室で、美しい音楽とともに、広大な宇宙の旅をお楽しみいただけたらと思っています。
コロナ禍が落ち着いたらぜひ。6月までには下火にならないかなぁ……
ブラックホール関連の観測はされてないのでしょうか?
せいめい望遠鏡では、望遠鏡の機敏性を生かして、ガンマ線バーストなどの突発天体の増光を捉えたら、いち早く望遠鏡を向けて観測を行うことを目指しています。
もしそれを捉えることができたら、ガンマ線バーストの発生源(ブラックホールとか?)について詳しく知ることができるかもしれない、とみなさん、頑張ってますよ。
宣伝ありがとうございます。
博物館でも売ってます(笑)が、なかなかの人気商品です。
博物館での売れ行きトップですもんね。
その他イベント等は、岡山天文博物館公式サイトを参照下さい。
ブラックホールという単語自体は、最近テレビ等でよく聞きます。
まあ大体が大食いタレントさんを紹介・食べっぷりを形容する時ですが(笑)
ブラックホールは、人間と違って食べたものはそれっきり出てこないぞとは思います。溢れることはあるかも知れないですが(笑)
ま、たしかに、よく“ブラックホールみたいになんでも飲み込む”とか言われますが、そんなに悪い奴じゃないんですけどね。
構造が単純ということでしょうか。
福江先生提唱の、ブラックホールのおばQ定理のことでしょうか?
そうですね、実は単純な奴です。
おまけに、よっぽど近づかない限り、飲み込まれたりしないです。
さらには、洗面台にバケツで水をぶちまけたら、跳ね返ってくるように、ブラックホールだって一時に大量のものは飲み込めないので、大量にものを落とせば、一定量以上は吹き飛ばしてしまいます。
いわゆるブラックホールジェットというヤツです。
ブラックホールジェットも福江先生の専門分野でしたね。大食いで言うと、詰め込みすぎて口から食べ物が溢れてこぼれている状態だ(笑)
本間先生が、「現在小中学校ではブラックホールのことは教えてない」とおっしゃってましたが、何か理由があるのでしょうか?
具体的に調査したわけではないので、あくまで想像ですが、一つの理由としては、とくに小学生だと空間認識がまだ十分に発達していないのがあるでしょう。だからブラックホールとか宇宙の膨張とかはわからない子が多いでしょうね。
またもっと大きな理由としては、教える側の先生が理解できていないだろうということがあります。まぁ、これは教員養成など大学教育の方の責任でしょうけど。一方、そこらへんは、科学館やプラネなど社会教育施設の方でかなりカバーできていると思います。
あ、ちょっとマジに答えてしまった;
それと「文系のための科学書シリーズ」(子供がよんでも面白い科学解説書)のような入門書も必要でしょうね。本間先生の講義では、一部動画での説明もあり、わかりやすかったです。またこういうシリーズを出される時は、ぜひQRコードで動画へのリンクをお願いしたいところです。電子書籍だったらそのまま埋め込むのも出来るのかな。
そうそう、本の役割を書き忘れていました。フォローありがとうございます。
冒頭に、ブラックホールの合体によって発生した重力波の直接検出(2015)に続き、ついにブラックホールの直接撮像に成功(2019)したのは凄い快挙であると書かれてますが、先に重力波の直接検出がらみでうかがってもよいでしょうか。
その後も合体による重力波の検出は続いているようで、この「中間質量ブラックホールの誕生」の記事もありました。この記事によると、“合体により太陽約8個分の質量が重力波のエネルギーに変換された”とあるのですが、これは質量が重力波に直接変換されたということでしょうか?
もうブラックホールの合体に伴う重力波はバカスカ受かっているので、すでに統計的議論もできる時代になりました。ブラックホールシャドーの撮像もそうですが、生きている間にこんな時代が来るとは思わなかったですね。悔いはないです(ウソです;いっぱいあります)。
ですねえ。嶺重先生の著者インタビュー『ブラックホール天文学入門』の時には、“ブラックホールの合体は、宇宙の歴史を考える上で重要なので、これから期待される学問分野です。”とうかがってましたからまだ先の話だと。
さて、上記の件ですが、そのとおりです。ブラックホール(時空のゆがみ)が合体する際に、ゆがみの不均一性や振動などが直接に重力波のエネルギーに変換されて放出されるものです。もう完全に非線形な現象なので、具体的な取り扱いはぼくもさっぱりできないですけど。
質量が重力波に変換されるということは、何も吸い込まない状態のブラックホールの質量は徐々に減っていくのでしょうか?
電磁波が生じるためには、電荷が静止しているだけではだめで、たとえばアンテナの中を電荷が振動する(電流が流れる)必要があります。同様に、重力波が生じるためには、質量が静止しているだけではだめで、ブラックホール連星の公転や合体のように、質量がダイナミックに動いている必要があります。ブラックホールが合体する前も、しばらくの間は、2つのブラックホールが公転運動しながら弱い重力波を放射して近づく時期があります。ああ、そういう点では、公転運動のエネルギーも重力波に転換しているはずですね。・・・重力波についてはシロートなのが露見してしまいました;;
重力は等加速度運動と等価(区別できない)だけど、そこにぶれが生ずると重力波となって検出可能になるということですね。
苦手の重力波の質問で気が引けるのですが(嶺重先生のインタビュー時にもうかがった)「重力=空間をゆがめる力」も光速で伝わるようですが、ブラックホールの重力波は、どういう機序で外に影響を及ぼしていると考えられているのでしょうか。
重力波は電磁波と同じく横波なので、進行方向に向かって、上下左右に空間が伸び縮みする振動が伝わることになります(斜め方向の伸び縮みのモードもあって、電磁波と同じく偏光は2方向あります)。電磁波と重力波は、重力には引力しかないこと、重力が非常に弱い力であることを除けば、非常に似通っていますね。
たとえば、地上放送のアンテナはアンテナの長い棒を基地局に対して直角に配置します。アンテナ(電流の方向)に垂直方向に電磁波の送受信の効率が高いためです。連星が回転しているときにでる重力波も、回転軸の方向に強く放射されるそうです。よく、連星の公転平面方向にゆがみが伝わる絵がありますが、あれは間違いだそうです。←これは重力波の専門家から飲み会で聞いた話で、ぼくも知ってびっくりでした。
連星系の重力波も、回転軸の方向に強く放射されるんですね。←ほとんど分かってませんが(汗;)
口絵にあるジェットの電波画像を見ると、芝生に水をまくスプリンクラーのようにも見えますが、こういう軸がぶれている回転の場合も回転軸の方向に重力波が強く出るのですか?
口絵にあるジェットは、ブラックホールと超巨星からなるSS433天体のもので、ブラックホール近傍から吹き出す高温プラズマガスのジェットですね。SS433天体も連星ではあるのですが、ブラックホール同士ではないので、重力波はほとんど出ていません。
ただ、ジェットの方のフラツキ運動は、発見されて40年以上経った現在でも、いまだに定説がない謎の天体です。余談ですが、SS433ジェットは、大学院時代の最初の単著論文のテーマにしたものです(古い;;;)。
有力な説は無いのでしょうか?
ジェットがぶれるということは、ブラックホールの回転軸がぶれている?
重心が真ん中に無い?
SS433ジェットが1979年に発見された当初から、2つの説があって、一つは上で書かれているように、ブラックホールの回転軸がコマの軸のように味噌擂り運動しているというものです(地球の自転軸の歳差運動と類似のものです)。そのブラックホールの歳差運動に引きずられて、ブラックホール周辺のガス降着円盤もフラツキ運動をして、ガス降着円盤から発射するジェットもふらつくわけですね。
もう一つは、ブラックホールにガスを供給している傍らの超巨星の重力的な影響でガス円盤が歳差しているという可能性です。前者の可能性が高いのですが、決定的な証拠はまだないのが現状なんですね。
日進月歩の天文学ですが、長年解けない謎も多いんですよ。
謎が多い方がそれだけ楽しみもあるということですね(笑)
ディスカバリーチャンネルで、科学番組を時々見ているのですが、最近「ブラックホールの秘密」と「中性子星の悪夢」という番組を見ました。制作年代がはっきりしないのですが、出演している天文学者が同じで、2017年の中性子星の衝突(合体)への言及と、ブラックホールの直接写像にはまだ成功してないというところから、2017, 2018年頃制作の番組だと思います。
そこでパルサーとマグネター(磁気モンスター)の話とか、中性子星から放射されるビームについても解説があったのですが、この中性子星からのビームとブラックホールジェットとは、機序が全く違うのでしょうか?
個人的にはまったく異なると言いたいところですが異論もある話ですね。そもそもブラックホールジェットには大きく2系統あって、SS433ジェットなどではおそらくは周囲からガスが円盤状にドバっと落ちてきて、円盤の軸方向にビュッと吹き出すタイプです。
も一つは自転しているカー・ブラックホールに磁場が付随していて、ブラックホールの自転エネルギーが磁場を介してジェットに変換されている系です。マグネターなどは磁場が重要だという点では後者と似ていますね。ただ、エネルギーの変換は違うかもしれません。おっと、これ以上はボロが出そうなので(磁場、嫌い;笑)
ジェットにも二系統あったとは。
『90分でブラックホールがわかる本』は、豊富な写真が魅力的な一冊に仕上がってますが、表紙の写真が話題のイベントホライゾン望遠鏡によるブラックホールシャドウですね。
これは電波望遠鏡による写像ですが、光学望遠鏡ではどのように見えるのでしょうか。泉浦秀行准教授のお話では、数十年単位では可能じゃないかということでしたが。
実際の観測は泉浦さんの言われるように非常に困難です。理由は2つあって、一つは分解能(解像度)がぜんぜん足らないこと(数十mかもっと大きな口径の望遠鏡が必要でしょう)と、途中の星間物質(塵など)のために可視光では透過してみえないだろうことがあります。
観測は無理でも理論的な推論はできないかといわれると、実はよくわからんのです。
おそらく、M87の超巨大ブラックホール周辺に広がるガスは、電波はそこそこ放射しているようですが、とても希薄なガスのようで、可視光ではしょぼくって見えないかもしれません。
ということは、それこそ近づいて撮影するしかないかもですね。
カラー写真というと同じく口絵に載っている福江先生の「降着円盤の“世界初のカラー画像”(1988)」も美麗ですね。
写真が多種あるので実際に本を手にとって見ていただきたいのですが、個人的には図36の段階を経たブラックホールのシルエットがどう見えるかの4枚の画像が良かったです。
はは、それはありがとうございます。今回のM87の場合は、しっかりとした降着円盤はないので、予想通りのものが見えたわけではないですが、感無量ではあったですね。
何しろ、1980年代当時は、ブラックホールの実在に半信半疑の研究者の方が多かったですからね。時代の流れは感じますです。
とすると、1984年公開の『さよならジュピター』は、先見性があったということですね。(太陽系内に侵入してくるマイクロブラックホールの軌道を、木星を爆発させて変更する作戦)
懐かしいですね。若かったときの三浦友和が主演でしたっけ。
そうです。自由落下状態でのベッドシーンもありました(笑)
木星を縮退?させてぶつけて進路を逸らせる話だったと思いますが、運動量が足らないと思った記憶があります。
コマケンでも当時のマイコンを使って検証したみたいですが、うまくいく場合と失敗する場合があったそうです。
あと本書で面白かったのが、映画で初めてブラックホールが本気で描かれた『インターステラー』(2014)。この作品でも画面のインパクト重視で、ブラックホールの見え方そのものは物足らなかったと書かれてますが、評価すると何点くらいなのでしょうか?(笑)
あ、これは150点ぐらいです(笑)。ブラックホールの描写自体は映像重視でしたが、元計算はソーン(重力波でノーベル賞を取った一人)らがやっていて、原論文にはそこらへんがちゃんとエクスキューズしてあります。何より、ぼくの昔の研究も含め、先駆的な研究はきちんと引用してあるあたりが、凄い人はやはりエライです。その原論文には、実際の見え方(しょぼいです)などもきちんと計算してあります。原論文を読んだ後に、DVDで観たのですが、たしかに、ブラックホールだけなら70点か80点ぐらいでしょうか。
でも、この映画、父と娘の物語でもありましたよね。最後あたりは、もー、滂沱でありました(爆笑)。それで大幅な加点です。
父と娘の力でブラックホール加点なんですね(笑)
そういう凄い人も『インターステラー』にからんでいたのですね。
前述の「ブラックホールの秘密」でも、似たようなCGが使われていました。これは、視聴者が分かりやすいようにと言う側面もあるのでしょうね。
ああ、これは動画も静止画もイラストですねぇ。黒い円(ブラックホールシャドー)に何かがぶつかって爆発しているシーンがありますが、ここはシャドーの縁は固体表面もないし時空の曲率が急変するとこでもないんですよね。突っ込みどころ満載ですが綺麗でインパクトのある画像には仕上がっていると思います。
はは、やっぱり(笑)
ゴジラシリーズに初めてブラックホールが登場したのは、2000年公開の『ゴジラ×メガギラス G消滅作戦』で、なんとゴジラをブラックホールで消滅させようとする。
もともと無謀そのものの作戦なんですが、一番気になったのはブラックホールの質量。吸い込む大きさと対ゴジラ効果でいうと、できるだけ小さめに設定しても最低60cmくらいは欲しいところです。
で、『90分でブラックホールがわかる本』によりますと
太陽をブラックホール化した際のシュバルツシルト半径が、約3km
シュバルツシルト半径はブラックホールの質量に比例する
ということは、太陽のブラックホールの一万分の一のサイズで、3km/10000=30cm。
太陽の質量が地球の33万倍なので、質量的には地球の33倍ですね。(計算合ってるかな(汗;))
これが衛星軌道を回っていると……(笑)
対ゴジラでブラックホールを有効に使う作戦ってありますか?
映画は未見ですが、ゴジラ全体を吸い込むなら、上ぐらいのスペックが必要で、ゴジラどころか地球もやばいですね。ただ、ゴジラを倒すだけなら、小惑星ぐらいの質量のマイクロブラックホールをぶつけて、脳の中枢を破壊すれば可能かもしれないです。もっとも『大怪獣のあとしまつ』(未見)でしたっけ、ネットで総叩きされてる映画みたいに、後始末は大変でしょうが。←コミックの『怪獣8号』でも後始末の設定があって、こっちは面白いです。あれ、怪獣の話題になってる。
あまりにくだらないという噂なので逆に見てみたい(笑)
怪獣の死体の後始末は、山本弘先生の『MM9 destruction』(2013)が詳しかったです。
射手座Aスターのブラックホールの「瞬き」の原因とされる「ホット・スポット」とはどういうものだと考えられているのでしょうか?
上記の「ホット・スポット」の話は知らなかったですが、原論文もざっとみましたが、判断が難しいですね。理論的な難点はいろいろな周期があってもいいことや、いて座A*ではそもそも降着円盤があるかどうか不明な点ですね。観測的にはALMAでそこまで精度のあるデータが出せるのかということもあります。事実かどうか現時点では判断しにくいので、あまり話題にならなかったのでしょう。
あ、質問の答えになっていない; 「ホット・スポット」自体は、降着円盤内に(一時的に)生じた明るい輝点のことです。おそらく、嫌いな(苦手な)磁場が原因で。
原論文にも当たっていただいてすみません。苦手な磁場関連なのですね(汗;)
ちなみに、『MM9』は未読でしたが、山本さんは何度か会ったこともありますが、同い年でトンデモ本などへの思想的にも共感できる人です。←世の中に蔓延しているトンデモ本に真面目に対応すると著者を喜ばすだけなので、笑い飛ばすのがよいという立場
山本先生には何度も著者インタビューをお願いしてますのでよくわかります。
理化学研究所の「蒸発するブラックホールの内部を理論的に記述」は、イベントホライゾン付近にも物質が溜まっているということでしょうか。電波望遠鏡で区別が付くのでしょうか?
ブラックホールの情報問題は有名なので知っていましたが、上記の研究ははじめて読みました。面白い研究ですね。物質そのものは“ブラックホール”全体に詰まっているようです。ブラックホールの形成と蒸発が同時進行するけど、外部の時空構造自体は従来のブラックホールと変わらないようですね。もっとも従来のブラックホールと内部構造は異なるので、重力波望遠鏡などを使えば区別が付くかもしれないです。←テキトー
色々お教えいただき、ありがとうございます。
聞きそびれていたのですが、『やさしいアンドロイドの作り方―SFはどこまで現実になるのか』の出た1996年は、『空想科学読本』が出た年でもあるんですね。コンセプト的には似たところもある本が同時進行していたというのは興味深いところではあります。
長谷部さんにうかがいたいのですが、そもそも『やさしいアンドロイドの作り方』というコンセプトの本を福江先生にお願いすることになったのはどういう経緯があったのでしょうか。
企画はわたしが、福江先生の『SFアニメを天文する』(日本評論社)というご著書を拝読して感銘を受け、「アニメに限らずSF全般で描かれた未来の可能性を検証しつつ、天文に限らず科学に視野を広げて、福江先生の未来予想図をうかがいたい!」と切望したことから始まりました。幸い、やさしいやさしい福江先生が、前向きに検討してくださったのみならず、文系読者にも読みやすいよう心を砕いてご執筆くださり、本になった、という経緯です。
『SFアニメを天文する』は著者インタビューさせていただきました。『SFアニメの科学』と『SFアニメを科楽する!』も。
そうすると、『SFアニメを天文する』(1993年)のほうが断然『空想科学読本』に先んじてますね!
福江先生は、ゲーム好きとうかがってますが、SFファンにお薦めのゲームとかはあるでしょうか?
はいはい、待ってました(笑)。
もっとも、ぼくの場合はファンタジーRPGやシミュレーションRPGが多くて、とくにSF系に拘ってはいませんが。
SF色のあるものとしてはセガサターンでのSRPGの名作『サクラ大戦』や、背景知識が半端じゃない宇宙×ロボット×美少女の『ゼノサーガ(3部作だったかな)』あたりが強烈でしたね。
時間モノとしては、DSだったかな『クロノ・トリガー』が超傑作でした。イースシリーズの『イースIV Lacrimosa of DANA』も大感動的時間モノに入れていいんじゃないかな。
『バイオハザード』はもちろん推しですが、謎解きがマニアックで秀逸だった初期作品が好きでした。荒廃した世界でワイルドにサバイバルする『メタルマックス』シリーズも結構はまりましたね。最近の作品だと軌跡シリーズの『閃の軌跡』がロボット風味があります(現在進行中)。
DSでもやったんですが、3DSのリメイク版『ラジアントヒストリア パーフェクトクロノロジー』もパラレルワールド×時間×RPGで傑作だと思います(数日前に一段落させたのですが、まだ亜伝が残っている)。・・・えっと、書き出すとキリがなくて、いままでで一番長いコメントになっちゃいました。
(大爆笑)
本筋からは大幅に離れてしまうのですが、うちの孫(小六)がゲーム大好きで、いささかもてあましております。(スイッチとかスマホゲーム)
やはり親が時間制限とかを厳しくしたほうが良いと思われますか?
ぼくは子供が小学生の時分にファミコンが出始めたんですが、むしろ親(ぼく)が夢中でマリオとかDQとか、一緒に時間無制限でやってましたからねぇ。『バイオハザード』なんかは部屋を真っ暗にして夜中じゅうやってたり(笑)。
ただ、ゲームの攻略本たくさん買ってやりました。攻略本、実は漢字多いし、子供は隅から隅まで読むので、国語の勉強になったんじゃないかと思っています。
なるほど。そういう効能もあるんですね(笑)
『90分でブラックホールがわかる本』は、門外漢にもブラックホールのことに興味が湧き面白く読める本でした。やはり写真とかマンガの力は偉大です(笑)
『名作ゲームを遊科する』とかはどうでしょう(笑)
とても面白そうですね。ただ、ゲームの場合はプラットフォームがどんどん変わるので、ファミコンなどはもちろん、DSやVITAあたりの名作もプレイできないでしょうから、そこが難点でしょうか。もちろん最近でも名作はありますが、新作をプレイしてからとなると、数か月×10本とか、かなり時間が掛かりそうですね。何かうまい切り口があれば、チャレンジしてみたいですね。
よろしくお願いします。期待してます!(笑)>福江先生・長谷部さん
福江先生、長谷部さん、著者インタビューにご協力いただきありがとうございました。
岡山天文博物館館長の粟野諭美先生、お忙しいところありがとうございました。
また福江・粟野コンビの著作とか、福江・粟野・田島トリオの著作もお待ちします。
センス・オブ・ワンダーを感じるお話ばかりでした。
お呼びいただいてありがとうございました。
コロナ禍の中で久々に楽しい“イベント”でした。コロナが落ち着きましたら、ぜひ、オフライン飲み会をしましょうね。では、ありがとうございました。
コンビ・トリオ!できるといいですね。
楽しい時間をありがとうございました。
オフラインも楽しみにしています。