星霊と呼ばれるAIと人類が共存する未来。人間のユウリとその配偶官の星霊アルフリーデは銀河の覇を争う宇宙艦隊戦に身を投じる。
『星霊の艦隊1』の冒頭第一章は、早川書房のサイトで連載公開されてます。同リンクに用語集もあります。
星霊と呼ばれるAIと共存するアメノヤマト帝律圏所属のユウリは、星霊国家アルヴヘイムと同盟し、A Iを差別する人類連合と戦う。
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ユウリらの活躍で、クロトス会戦に勝利した〈星霊枢軸〉は〈人類連合圏〉による新兵器開発を阻止すべくデイム回廊の攻略に挑む!
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スマホ等で書影・粗筋が表示されない方、インタビュー中に出てきた関連書籍の情報は、こちらから。
こちらのエッセイも読ませていただきました。
タイムトラベラーの考察、とても面白いと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
ありがとうございます。多分これが一番何も考えなくても出てくるような考えなのではないかと思っています。
学会には所属してないので論文に触れることができないのと、専門書も中身をちゃんと吟味できていないので、知識不足や勘違いなどありましたらすみません。
(一部の論文はネットでもひっかかるんですがね。)
早川書房のホームページに掲載されている用語集を見ていて疑問に思ったのですが、いわゆる余剰次元のコンパクト化の問題をどうやって解決しているのかな、と。
一般相対性理論は次元がいくつあろうが構築することができる理論なので、余剰次元が通常の次元(ただし通常は空間軸)と同じであれば近似解としての重力理論の形が必ず変わると理解しています。
つまり、極限状態では逆二乗のニュートンの万有引力理論が成立するところが、逆N-1乗の理論になってしまい、そうすると惑星の動きを保つことすらできなくなってしまうと。(逆N-1乗のところは誤解があるかもしれませんが。)
それを防ぐため、通常は余剰次元が非常に短い周期で循環する(つまり輪っかになっている)状態にコンパクト化されていると仮定して、余剰次元方向の重力が3次元空間に制約されていることから逆二乗法則が担保されているのだ、と聞いたことがあります。
何らかの形で通常次元軸と余剰次元軸に差別化が行われないと現実世界との間に矛盾が生じてしまうので、このあたりをどう解決してるのか、ということに興味を持っているのでした。
この世界では、余剰次元軸にそって、重力そのものが変動する、という設定としております。
いわゆるWarped Extra Dimensionですが、この世界では、我々のブレーンから離れるほど、重力は急速に弱くなるというモデルになっています。
通常次元のブレーンのごく近傍以外では、重力はほぼ無視できるため、大きな余剰次元モデルと同様に処理でき、通常次元では、重力は逆2乗則に従います。
ああ、なんとなくわかりました。
私が思ったのは紐理論でも使われているカルツァ・クライン的な、空間の各点から軸が伸びている余剰次元だったのですが、先生がおっしゃるのは時空のブレーンみたいなもの(正式に何というのか知らないのですが)が並行に、(しかも多次元的に)存在していて、それぞれを隔てている方向の自由度のことを余剰次元と呼んでるのでしょうか?
「Warped Extra Dimension」で検索するとやたらhierarcyという単語がよくでてくるようですが、ぱっと見た感じでは何がヒエラルキーをつくってるのかわかりませんでした。 ただ、現実の世界から距離が離れていくというイメージが、ブレーン相互の距離のことを指してるとすると合点がいきます。
そのとおりですね。余剰次元がコンパクト化されていないモデルを総称して「大きな余剰次元」と呼ぶと認識しています。
その場合、我々の宇宙であるDブレーンをイメージしやすいように3次元から2次元に次元を落として「膜」とし、膜に垂直な方向に余剰次元がある、という描像で説明することが多いようです。
ヒエラルキーとは、階層性問題の文脈で出てきた言葉かもしれません。
階層性問題とは、重力が他の基本的な力(電磁相互作用、弱い相互作用、強い相互作用)に比べて非常に小さいことを問題としてとらえたものです。
それを説明するために、「重力だけは他の力と違って余分な次元を伝わっており、その分弱くなっている」という説明をしているモデルがあります。
大きな余剰次元や、Warped Extra Dimensionがこれにあたります。
勿論、これは非常に小さな距離のみの話であり、大きな距離では余分な次元は伝わっていません。よって逆二乗則に従うわけです。
あとは、単純に一般相対性理論のトーラス形の一般解ってどういう条件の元にできるのかも興味がありますね。
私が認識している範囲では、5次元以上で球面以外の事象の地平面を取ることが可能となるようです。
但し、さきほどのWarped Extra Dimensionモデルとの兼ね合いについては、別途検証が必要と思っております。
ご参考:http://www2.yukawa.kyoto-u.ac.jp/~kimurasho.oj/kimurasho/file/ishibashi.pdf(2015年 近代理工学部 石橋先生の講演資料より)
高次元の、複数の回転軸を持つ解というのは確かにありそうですね。回転対称性を使うことで、解が得られるのかも。えらく不安定になりそうな気がしますが。
4次元までは安定ですが、5次元以上は安定ではないようですね。
だからこそトーラス型を含め、いろいろな形状のブラックホールが想定できるそうです。
不安定であっても、星玉の制御などでなんとかしているのが作品世界の設定です。
そもそも、通常時空との”断体積”を自由に変動させたり、様々な方向の角速度を 自由に変動させたりしないといけませんので、安定であっては困る、というところでしょうか。
ブラックホールのエントロピーが質量に比例するというのはあたらしい理論なんでしょうか?
ホーキングの研究では表面積に比例するものとされていたと理解していますが。
ブラックホールのエントロピーは事象の地平面の面積に比例するというのは正しいご指摘です。
事象の地平面の半径は質量に比例しますので、正確には、「質量の2乗がエントロピーに比例する」、となりますでしょうか。
なるほど、理解です。
蛇足ですが、余剰次元では、先ほどの説明のように、重力定数Gが弱くなるモデルとしております。
そこで、Gが小さくなる効果で、熱放射Tはより激しくなります。
例えば、Gが10分の1ならば、質量が10分の1のブラックホールと同じ熱放射の激しさとなります。
(ご参考:$ T = \frac{\hbar c^3}{8\pi kGM} $)
ホーキング放射の式ですね。
高次元を考慮することで、このGが段階的に弱くなる解というのは得られるのでしょうか。
どうしても、知識が弦理論がはやりはじめた30年ぐらい前で止まってるので、そのあたりの定式化に馴染みがないんですよね。
余剰次元を単純にアインシュタイン方程式の次元を増やしたものとは限らないと考えないといけないんでしょうかね。
そうですね。高次元を考慮することで重力が弱くなる、というより、階層性の問題(重力が他の相互作用に比べて小さい)の解決のための一つの考えとして、高次元を考慮するのが良いのではないか、というモデルと理解しています。
ちなみに、1巻の参考文献に挙げてありました「Warp drive」の論文ですが、最新のWikipediaではその論文がサマライズされていました。
同じ項目の他の言語では解説が見られなかったので、もしかしたら山口先生の作品がらみで載ったのかもしれません。
記事ではアルクビエレ・ドライブに必要な膨大なエネルギーや、バブル内で系が閉じない問題を回避する案のひとつとして提示されていました。
それから、上の余剰次元の話とは矛盾するかもしれませんけど、一般相対論的には時空は擬リーマン多様体だから、トーラスの穴が開いたり閉じたりしないよなと思ったのですが、良く見ると常空間との断面が球やトーラスになるとあるけど、ブラックホールそのものが球とトーラスを行き来するわけではなさそうなんですよね。
つまり、位相空間で位相が変わってはいけないので穴は開いたままになるけど、3次元空間と接触したときの断面は、穴が開いてないところなら球で開いてるところならトーラスになるわけですね。
だとすると、星霊の数というのは宇宙開闢から数が決まっていて、星霊が誕生するとか消滅するというのはその多次元のトーラスが認識されるようになっているかどうかだけで決まっているのかな、なんて妄想もしてみました。
なるほど! それは楽しい想像ですね。
ご指摘の通り、「トポロジーは変化しない」というのが星環の基本的な設定です。
ただ、想定しているのが単純な3次元時空ではなく、余剰次元を含む時空なので、その点で既存の一般相対論では対応できないかも知れません。
素人考えなのですが、ブラックホールを考えてる時点で相対論的なので、高次元の一般相対性理論が成立していて、一般相対性理論が成立している以上そこは擬リーマン空間になるのかなと思ったりもします。
一般相対性理論はエネルギー密度テンソルを除いた部分は完全に数学的な存在なので、空間n次元、時間m次元のn+m次元で一般的に成立しますよね。
もっとも、最近の理論はかなり難しいことを考えてるみたいなので、きっと思いも寄らないことがあるのだろうなとは想像するのですが。
そもそも一般相対論と量子論の整合は未だ途上であるわけで、一般相対論と量子論が同時に成り立つ枠組みを考えようとするとどうしても一般相対論を超えた理論(量子重力理論)を検討せざるを得ません。
こうした量子重力理論の検討の過程で、超弦理論や、その帰結としての高次元時空、更には「星霊の艦隊」の物理の基本設定の一部となっているDブレーン理論などが検討された経緯があります。
勿論、一般相対論とニュートン力学の関係のように、量子重力理論の一定の制約(例えば低エネルギー、換言すればスケールが微細ではない、など)の下での近似として、3+1次元、あるいはより高次元の一般相対論が成り立つとは思います。
先生のように、いわゆる普通の(ブルーバックスレベルの)相対論の知識を越えたアイディアをネタにしてくださる方はそんなに多くはいないと思うのですが、最新とまで行かなくてもブラックホールひとつとってすらまだネタの宝庫なはずなので、これからこういった作品がどんどん増えて行ったらいいな、と思います。
ありがとうございます。SFは謂わば科学の入り口の一つなのだろうなと思います。
鉄腕アトムやドラえもんを見てロボット工学を志した研究者が意外に多いという事実をとってみても、たとえはるか未来の科学で現在は正確に描ききれないのだとしても、有り得るかもしれない夢の世界を実現する手段として、或いはそれそのものの興味深さや取り組むことの楽しさを提示するために、フィクションの中で科学を描くことは大切だと思っております。
今回はありがとうございます。
色々なお話が聞けておもしろかったです。普段、仲々接することができないような内容でしたので。
これからのさらなるご活躍を期待しております。
ありがとうございます。大変光栄です。
銀河を舞台にしたスペースオペラを描こうとすると、「超光速航法をどう描くか」というのが避けられない問題としてふりかかってきます。
勿論、「宇宙船が1Gで加速し続ければ乗員の時間はそれほど経過しない」、あるいは、「すべての住民が、超巨大なブラックホールの近傍で時間がゆっくり過ぎている世界で生きていて、恒星間の移動は光速未満で行われるが皆が時間の経過をそれほど気にしない」、など、アクロバティックな設定で切り抜けることも可能かも知れませんが。
これからも、物語世界を支える設定には、ちょっとしたひねりを加えて書いてみたいと思っております。
どうぞよろしくお願いいたします。
山口先生、ありがとうございました。
《星霊の艦隊》シリーズはジャケ買いもされるのではないかというくらいの、ツルペタ・美少女・百合要素がてんこ盛りされた作品でもありますので、ぜひお手にとってみてください(笑)