エルセントを出発したセルダン達は、ザイマンの高速艇で一路北をめざした。夏の心地よい海風を受けながら三日ほど進んだ所で、案内役のデクトが船員達に帆を降ろすように頼んだ。そしてクラハーン神の神官は甲板に立って小手をかざし、水平線の彼方を眺めてから五人の守護者達を呼んだ。何事かとブライスとベリック、エルネイアとスハーラがやって来てデクトの後ろに立った。海洋民族の島の王子ブライスが太い首を叩いた。
「どうしたんだ」
船の前方を眺めていたデクトが、ほっとしたように振り返った。いつもは綺麗に撫でつけられている銀髪が数日の航海で乱れて額にかかっている。
「ベリック王とエルネイア様が、まだ会っていませんでしたね。挨拶をしたほうが良いでしょう」
バルト−ルの少年王ベリックが不思議そうに尋ねた。
「誰に」
「トーム・ザンプタの姉君にです。マルヴェスター様がエルセントを出る時に、姉君に連絡を取るように頼んでおいたのです」
セントーンのエルネイア姫が、輝くような金髪を揺らして嬉しそうに叫んだ。
「海の精霊の事ね」
ベリックも甲板の手すりに走り寄って叫んだ。
「ホックノック族だ」
やがて船の前方の水面が広大な範囲に渡ってまるですり鉢のように陥没した。そしてその中央に巨大な水の空洞がポッカリと開いた。それを見てブライスがうんざりしたようにぼやいた。
「こんなに大げさな事を毎回する必要があるのか。船一隻、気泡に包んで水の中に押しこめればいいだけだろうが」
だが、初めてホックノック族に遭遇するベリックとエルネイアは興奮して手すりにしがみつき、瞬きする暇も惜しむかのようにその巨大な空洞を見つめていた。轟々たる水音の中、高速艇は突然傾くと一気に水の斜面を滑り降りた。
「わああ」
ベリック達の歓声と共に船は海の中の空洞に飲み込まれた。ブライスが大声でデクトに言った。
「また、トンポ・ダ・ガンダに行くのか」
デクトが首を振った。
「いいえ、それでは寄り道になります。このまままっすぐに北に向かうように頼んであるはずです」
やがて船の周りがすっかり水に包まれた。水の壁には海の力を引き出しているホックノック族がキラキラと輝いている。エルネイアが感極まったように叫んだ。
「すっごーい。やっぱりセントーンの外の世界には色々な事があるんだわ」
遅れてやって来たカインザーのセルダン王子が、水の天井を反り返るように見上げて倒れそうになったエルネイアを後ろから支えた。
「初めてだっけ、セントーンを出るの」
エルネイアはセルダンの腕の中から、王子の顔を見上げて怒ったように言った。
「そうよ、お姫様が二十歳過ぎるまで誰にもお城から連れ出してもらえなかったなんて、こんなにひどい話は聞いた事が無いわ」
セルダンはエルネイアの足元をチラリと見た。
「どうしてそんなにかかとの高い靴を履いてるの。ここ、船の上だしシムラーに行ったら馬に乗るのに」
「あら、どこに行ったって私、これ以上かかとの低い靴は履きませんからね」
エルネイアはきっぱりと言い放った。セルダンは言っても無駄だと悟って肩をすくめた。やがて傾いていた船が水平になった。ブライスがぐるりと巨大な水の空洞を見回した。
「おそらくこれで海底の流れに乗ったんだな」
ブライスの真剣な顔を見て心配したサルパートの巫女スハーラが尋ねた。
「どうしたの」
ブライスは水の天井から目をそらさないで答えた。
「出来る事ならばマルバ海の、いや世界中の海底海流を調べてみたい。水に潜る事が出来る船をつくって、海底から未踏の大陸に行けないだろうか。海上の海流が進入を拒んでも、海底ならば違うかもしれないからな」
スハーラが青ざめた。ブライスを失ってしまいそうな恐れを感じたのだ。横にいたデクトは無言でブライスを見つめた。だがベリックは無邪気に笑った。
「もういっこ方法がある。空から行けばいい」
ブライスは小さな仲間を見下ろした。
「どうやって空を飛ぶ」
ベリックが前方の水面を指さした。
「あれ、鳥じゃない。あの大きさなら人が乗っかれそうだよ」
水の中に黒々とした巨大な影が見える。信じられない程の大きさだが、確かにそれは翼を広げた鳥のようだった。覗き込んだスハーラが息を呑んだ。
「まさか、デルメッツ」
エルネイアがスハーラの横から怖々と覗き込んだ。
「南の将の要塞の巨獣は倒したんじゃなかったの」
その時、細身の高速艇の甲板の横に、船と並ぶように白い海竜が首をもたげた。その頭の上に透明なオレンジ色の羽を持つ蝶のような姿の美しい精霊が立っていた。
「不滅の鷲を、生まれ故郷の近くの海に返そうと思うてな」
精霊は海竜ゼネスタの頭から浮かぶようにゆっくりと甲板に飛び降りると、エルネイアとスハーラに甲高い声でそう説明した。デクトが迎えて頭を下げた。
「ごぶさたいたしております。ミッチ・ピッチ様」
エルネイアとベリックがいそいそとミッチ・ピッチの前に立った。そしてエルネイアが優雅にスカートをつまんで挨拶した。
「初めまして。セントーンのエルネイアでございます」
「当代の盾の守護者はこれほどの美しさであったか」
ミッチ・ピッチの羽の色が驚いたように黄色くまたたいた。人間相手ならば自信満々のエルネイアもさすがに照れて赤くなった。次にミッチ・ピッチはベリックに視線を移した。
「よくぞ戻られたバルトールの王よ」
ベリックはニコニコと微笑んだ。
「シュシュシュ・フストにお世話になっています」
「うむ。私からも弟をよろしく頼む。ところでマルヴェスターはどうした」
ブライスが甲板の先のほうに転がっている灰色のボロの固まりのような物を指さした。
「そこに落ちてます」
ミッチ・ピッチがヒタヒタと歩み寄って。船酔いでつぶれているマルヴェスターめがけて手の先から勢いよく海水をほとばしらせた。びしょ濡れになったマルヴェスターがうめきながら体を起こした。そして髭についた塩辛い水をなめて顔をしかめた。
「おお、ミッチ・ピッチか。よろしく頼む」
そう言ってまた横になろうとした魔術師を、海の女王は驚く程の力で引きずって来て守護者達の前に座らせた。
「話があるのじゃ長老。この船の先導にデルメッツをつけた」
マルヴェスターは辛そうに船縁に這って行くと立ち上がって海面を覗き込み、弱々しく手を振った。
「可愛そうに、鳥が泳がされては辛かろう。ドラティ、バイオン、デルメッツ。大切な始祖の生き物達を何とか救えなかったものか」
ミッチ・ピッチの羽が憂うように紫になった。
「実はデルメッツの亡骸に先導させているのにはもう一つ理由がある」
マルヴェスターが船縁に背をもたせてまた座り込むと膝を抱いた。
「どうした」
「海にまがまがしい気配が満ちている。五百年前、ザイマンの艦隊が全滅した時と同じ闇の気配だ。デルメッツが持つバステラ神の気配を先頭にたてないと、この船を運ぶだけの空洞をつくれないのだ」
マルヴェスターが横に転がっていた杖を引き寄せてうなった。
「いよいよか」
ミッチ・ピッチの羽の色が黒に近いほど濃くなった。
「ついに現われたようじゃ」
そのやりとりを聞いていたセルダンが不思議そうに尋ねた。
「現われたって、何がですか」
ミッチ・ピッチが答えた。
「謎に包まれた黒い冠の魔法使いと巨獣だよ、剣の守護者」
一同に緊張が走った。ミッチ・ピッチはゆっくりとそこに集まった者達を見回した。
「しかしここにもたいへんな魔法が集っているな。六人の聖宝の守護者に翼の神の弟子とクラハーン神の神官か。間違いなく敵はこの事を知ろう」
マルヴェスターがため息をついた。
「やはりか。何とかこっそりとここを通り抜けたかったのだが」
「黒い冠の魔法使いは予知の魔法使いだ、並外れた知覚力を持つ。逃れるのは無理だ」
ブライスが怒ったようにマルヴェスターに言った。
「そんな事わかってたでしょう」
マルヴェスターはまじめな顔でザイマンの王子を見上げた。
「この闘いはわずかでも希望のある方向に物事を考えていかなければ、耐えていけるものではない」
「そうかなあ、最悪の事態を想定して対処法を考えるべきでしょう。なあセルダン」
セルダンはきょとんとして答えた。
「なんで。出来る可能性のある事の中で、一番希望が持てる事をするべきなんじゃない」
「そうか、お前はカインザー人だった」
そう言ってブライスは周りを見回した。ベリックとエルネイアがニコニコと見返した。
「まさか」
スハーラが後ろからそっとブライスの手を握った。
「安心して。私がいるから」
「ありがとう」
ミッチ・ピッチがコロコロとした声で言った。
「心配するな、この方法で移動する限りそう簡単に敵は手を出せない」
その時、甲板にもう一人ホックノック族が這い上がって来た。ミッチ・ピッチより二回り程小さい。ちょっと考え込んだスハーラが人差し指を立てた。
「チッチ・ヒッチね」
新しい精霊の羽がピンク色に輝いた。
「名前、覚えてくれててありがとう。あなた賢い」
ミッチ・ピッチが再びマルヴェスターに言った。
「ここから先はチッチ・ヒッチが先導します。私はトンポ・ダ・ガンダに帰る」
「忙しそうだな」
「もうすぐマルバ海で海戦が始まる。多くの死者がトンポ・ダ・ガンダにやって来る」
ブライスが厳しい声で言った。
「親父とライケンの艦隊の戦いか」
「そうじゃ。だがやって来るのはほとんどがザイマン人となろう」
「仕方がないさ。丁重に葬って欲しい。王子の俺から頼む」
「違うぞブライス、その時そなたは王だ。王の願いは聞かねばなるまい」
ブライスは無言で目をつむった。ミッチ・ピッチは船の横の水中にいたゼネスタの頭に飛び降りると、海中に消えた。後にはチッチ・ヒッチが残った。小柄な精霊はきょろきょろと甲板を見回した。
「あたい、海の中にいていい」
デクトが答えた。
「かまいませんとも。水先の案内、よろしくお願いします」
「うん」
チッチ・ヒッチもチャポンと水の中に消えた。
一人一人のホックノック族が発する薄明かりに照らされて、夕暮れのような明るさの中を船は進んだ。一行は、一応夜とおぼしき時間になった頃に眠りにつく事にした。サシ・カシュウがいればこのあたりはうまく調節しただろうが、デクトもそれなりに目安になる時間を告げる事ができた。海底に入って数日が過ぎると、巨大な水の壁の向こうに暗い岩が見えるようになった。甲板の樽に座っていたベリックが相変わらず寝そべっているマルヴェスターに尋ねた。
「ここはどのあたりなんでしょう」
マルヴスターは仰向けになって辛そうに答えた。
「ソンタール大陸の最東端を回っているのだろう。ユマール大陸に一番近い所になる」
そこにスハーラがやって来て、マルヴェスターに近づいた。
「マルヴェスター様、大丈夫ですか」
「ああ、さすがに目を閉じてももう眠る事すら出来ん。気がまぎれるから何か話をしてくれ」
スハーラは横に座ると、酔い疲れた魔術師の服の怪しい臭いに少し鼻をしかめた。
「一度お聞きしたいと思っていた事があるんです。ロッグ陥落の時、マルヴェスター様が救援に遅れた理由となった用事とは何ですか」
「ああ、話した事が無かったかな。クラハーン神のご意志でシャンダイア王家の家族を遠くに逃がしに行っていた。当時あの近くに住んでいたんだよ」
「アーヤ様のご先祖ですね」
「そうだ。三千年前、バマラグの反乱でシャンダイアの王家が皆殺しになった時、クラハーン神は具合が悪くて式典の席をはずしていた末の王子を助けて逃げた」
「やはり言い伝えは本当だったんですね」
「王子はシムラーでデクトに育てられたが、王家の血筋を絶やすわけにはいかない」
「そこで私は、シャンダイアの貴族の娘をシムラーに連れて来れば良いと進言しました」
いつの間にか後ろに来ていたデクトが言った。マルヴェスターが首を振った。
「王子の命は守れるが、人々の暮らしと隔絶されてしまう。それではいつの日か王として戻る機会が来ても、皆が認めてくれる良い王にはなれない。王家の子は私が命に代えても守るとクラハーン神に約束した。王子もその子孫もわしが守りながらシャンダイアの国々で暮らしてきたのだ」
「クラハーン神はどうして隠れたままでいるのでしょう。もっと強く影響力を発揮すれば良いと思うのですが」
デクトが首を振った。
「神の力が安定しないのです。バマラグの呼ぶ声に振り返った時に神性を汚されたせいでしょう」
マルヴェスターがデクトをにらんだ。
「正直に言っておけ。安定しないと言うよりはクラハーン神は一人ではほとんど何も出来ないのだ」
スハーラとベリックが驚いた。デクトが傷ついた顔をした。
「出来ないという事は無いですよ。それなりに力はあります」
スハーラが懐からルドニアの霊薬を取り出した。
「これを、トンポ・ダ・ガンダのミッチ・ピッチ様に届けてくれましたよね」
「ええ。ただクラハーン神は統治の指輪の神です。その力は他の聖宝の力を統率する事で、クラハーン神ご自身の魔法には際立った特性が無いのです」
「でもその力が聖宝神の頂点に立つ力なのでしょう」
マルヴェスタ−がぼそりと言った。
「問題は心なのだ。強い意志が無いと他の聖宝の力を引き出せない。その心が傷付いて精神状態が安定しないのだ。時に積極的に行動を起こそうとするが、すぐに気力を失ってしまう」
「だから、アーヤ様を救うのには聖宝の守護者全員の協力が必要なのですね」
「そう、そしてようやくその気になったクラハーン神に本腰を入れてもらうためにも、お前達の力が必要なんだよ」
水中に潜ってからほぼ十日ほどたった頃、船は坂を上るように上昇して水面に浮上した。程なくチッチ・ヒッチが甲板に現れた。
「シムラー、もうすぐそこ。私達ここで待つ」
たまたまその場に居合わせたセルダンが答えた。
「ああ、ありがとう」
チッチ・ヒッチは海に飛び込むと、デルメッツとともに沈んだ。
それから半日、船は荒々しい北海の荒波の中を進み、マルヴェスターは甲板で悲鳴をあげた。やがて突然、船はこれまでとは全く雰囲気が違う海域に入った。あれ程荒かった水面が湖のように静まり、やがて船のまわりに広がる波紋のみになった。音が消えた、風が無くなったのだ。海面に薄いもやがかかってきた。甲板で周りの様子を観察していたブライスが身震いした。
「なんだここは」
「着いたのです」
そう言ったデクトが舳先に立って胸の前で六角形の形を描くと、光の六角形がそこにあらわれた。光の六角形は大きさを増して門のように船の前にうかぶと、その光がもやを払って目の前に島影が浮かび上がった。船は引き寄せられるように島に近づいた。マルヴェスターが杖を頼りに立ち上がった。
「シムラーは中央の天の座と呼ばれる島を六つの島が取り囲んでいる」
ブライスが船員にてきぱきと指示を与えた。
「クラハーン神はどこにいるのですか」
「もちろん天の座だ」
「まっすぐにそこに着けましょうか」
「いや、まわりの六つの島を順に巡って行くんだ」
「そんな時間は無いでしょう」
「必要なのだよ。クラハーン神は光の指輪の神だが、闇の特性に傷つけられている。我々は一つ一つの聖宝で神の心の闇を払っていかなければならないんだ」
その時、甲板に出て来たエルネイア姫が、ふかふかの毛皮をなでながら小首をかしげた。
「あら、寒くないわ」
デクトが笑った。
「ここの気温は常に一定で変化がありません」
アーヤを抱いたマルヴェスター、五人の守護者、デクト。そして八頭の馬は慎重に地上に降り立った。ザイマン人の乗組員達はここで待機する事になる。マルヴェスターは鞍の前に座らせるようにアーヤを抱いた。ベリックは小柄な馬に乗り、フオラを引く。ブライスはスゥエルトに乗った。他の守護者も各々に割り当てられた馬にまたがった。エルネイアはかかとの高い靴で器用に横座りしている。
「さあ、行くぞ」
手をのばしてフオラの頭を叩いたベリックがあたりを見回した。
「この島では何をするんですか」
マルヴェスターが島の中央部を杖で指し示した。
「舞の座がある。ベリック、ますはお前の出番だ」
・・・・・・・・・・
東の将キルティアの軍勢は平原を焼き尽くす炎のようにセントーンになだれ込んだ。濃紺の鎧の戦士と黒い衣の神官兵達はセントーンの最前線の防衛軍の激しい抵抗をねじ伏せるように突破した。
実はキルティアはソンタールとセントーンの圧倒的な兵力の差をそれほど楽観視してはいない。セントーン王国はレンゼン王、ゼリドル王子、エルネイア姫という王族の元に一枚岩の結束を誇っているが、攻め込むキルティア、ライケン、マコーキンのソンタール三将は全く連携をしていない。むしろ敵はお互いと言っても良かった。
船でやって来るライケンの兵力は約五万にすぎない。それに対して現在のキルティアはかつてない規模の軍を抱えている。その数は五十万にのぼり、ゆうにライケンの十倍はあった。しかし東の将直属の三十万以外に本国から送られてきている二十万は、ライケンの到着とともにその配下に走る可能性が高い。ライケンとキルティアの差がそこにある。政治力だ。本国の貴族達はキルティアよりもライケンにつながりがある者が圧倒的に多い。この戦いに勝利した後、ライケンのソンタール国内での地位はおそらくゼイバーに匹敵するところまで上ると思われた。
セントーンに入ったキルティアは最も要塞に近い都市ハダラを囲む事もせずに押し流すように攻撃を加え、わずか三日で陥落させた。そして占領後の都市の処置を黒の神官達にまかせた。そこで何が行われるのか気にもとめなかった。ただそれがこれから先に立ち塞がる多くの都市に恐怖を与えて、抵抗を少しでも少なくさせればそれで良い。
黒煙が上がるハダラを背にして、東の将キルティアは真っ赤な髪を振り乱しながら配下の指揮官達に叫んだ。
「ここからトラム川を遡る。次はサガヤだ。一刻も早く落とせ」
部下達が「次はサガヤだ」と唱和すると、大軍勢から地鳴りのような雄叫びがあがった。サガヤは早く落とさなければならなかった。レリーバが火口湖に溜めた毒は、長年かけて建設した水路に導かれて、サガヤから二股に分かれるトラム川の下流全域を侵すはずだったからだ。
(ライケンが来る前にサガヤからルボン平原を圧し渡り、エルセントの上流のトラゼールを支配下に置ければ、セントーンの半分を手中に収める事ができる。もしライケンがトラム川の下流のダワやヤベリに侵攻してもそこはすでに毒に汚染されて軍を維持する事が出来ないはず。レリーバの毒で広大なセントーン平野の戦場は半分の大きさになる)
キルティアは濃紺の鞍を置いた雄大な馬格の軍馬にまたがって軍とともに北進を開始した。
(第三章に続く)
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