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第三章 二人の守護者の旅立ち

 かつて繁栄を誇ったセントーンの首都エルセントは、ユマールの将と東の将の攻撃による破壊からの復興の最中にあった。一時期カインザーに滞在していた王女エルネイア姫は、セルダン王子が緑の要塞に移った際に、故郷に帰って来た。久し振りに友人に会えた指輪の守護者アーヤは小躍りして喜んだ。
「退屈だったの、だーれもいないんだもん」
 甥っ子のメルビン王子の手を引いたエルネイアが笑いながら答えた。
「私もすぐに緑の要塞に行くわ」
 幼いメルビン王子がエルネイアを見上げた。
「僕もセルダン王子と一緒に戦うよ」
「ええ、期待しているわ。でもあなたが大人になる前に戦いはセルダン王子が終わらせてくれるわよ」
 すっかり娘らしく美しくなったアーヤが妙な顔をした。
「ねえまだセルダン王子なの、メルビンのセルダン叔父さんにはいつなるの」
 エルネイアが肩をすくめた。
「セルダンが逃げ回ってるのよ」
「あらそれはいけないわ、何か女王にできることは無いかしら」
 エルネイアがニヤリとした。
「セルダンに会ってくれる」
 アーヤが目を輝かせた。
「もちろん」
「マルヴェスター様から伝言があったの、私と一緒に緑の要塞に来て欲しいって」
 アーヤは歓声を上げてエルネイアにとびついた。

 もちろんこの話にアーヤのお守役である、クラハーン神の神官デクトは良い顔をしなかった。
「危険です。最終的に女王の力が必要な事は確かですが、何も戦役全体に参加する事は無い」
 エルネイアが上品にお茶をすすりながら答えた。
「マルヴェスター様は何か聖宝の融合について話をしていたわ、アーヤの力が必要なんだって。あなたも指輪の神の神官ならわかるでしょう」
「確かにまだ女王は、ご自分の力を制御できません」
 アーヤが険悪な目でデクトをにらんだ。
「だから」
 デクトがひるんだ。
「だからその訓練が必要なのですが、何も戦場でする事は無い」
 エルネイアが微笑んで言った。
「セルダンの軍の後ろなら安全よ、グラン・エルバ・ソンタールに着く前までに力の融合について勉強しましょう」
 アーヤが机を叩いて立ち上がった。
「決まりね、厩に行ってフオラに話してくる」
 デクトが肩を落とした。
「私もお供しますよ」

第四章に続く

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