D#: 夢の土
地表がすべて舗装され大洋が人工の海岸線で包囲され尽くしたとき、奇怪な疫病が発生して人はばたばたと斃れていった。生き延びたわずかな人々は神託に救いを求め、「夢の土を持ち帰れ」との指示を得た。何人もの若者が死よりも深い眠りを与えられ夢に赴いたがひとりも還らなかった。ついに最後の若者が夢に向かい、彼はたったひとりで地上と寸分たがわぬ夢の世界を歩き回った。世界にはむき出しの地面も土砂の堆積する砂州もなかった。地上をくまなく探し歩いた末、ようやく彼は大昔に倒壊したふたつの塔の間からひとすくいの土を見いだした。だがどうやってこれを持ち帰ったらいい?
思いあまった彼は夢の中で土をほおばり飲み下した。夢の中で彼は倒れ、深い眠りについた。そして今、彼は夢から戻る途上にある。
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