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『飛翔せよ、閃光の虚空へ!』
スコーリア戦史1
キャサリン・アサロ著

中原尚哉訳
山下しゅんや画
ISBN4-15-011292-4 C0197

 

ハヤカワ文庫SF 800円 1999年12月15日刊
粗筋:(by みさと)
  遺伝子操作から生まれた二つの種族からなるスコーリア王国とユーブ帝国、 そして連合国(地球)。銀河の争いは前の2つの国家の覇権争いでもあった。
  他者の苦痛のみを快楽としているユーブ貴族の若者とエンパス・ローン系サイ  オンの王位継承者にしてジャグ戦士たる二人はとある中立惑星でであう。
   相手は敵なのになぜ・・・。宇宙を舞台にロミオとジュリエットもといソー スコニーことソズとジェイブリオルは出会い惹かれていく。憎い敵なのに惹か れるのはジェイブリオルに隠された秘密が関係していた。この秘密が明らかに  なったら・・・
   2つの種族は遺伝子操作から生み出された光と影、裏と表。SFでロマンスでスコーリア王国の人々のつながりも一興。帯の<アメリカ版「星界の紋章」 はちょっと違うぞ、だけど途中でやめられない面白さがぎっしり。



(1) 飛翔せよ、閃光の虚空へ!
(2) 稲妻よ、聖なる星をめざせ!
(3) 制覇せよ、光輝の海を!(上)
(3) 制覇せよ、光輝の海を!(下)


[みさと]   遺伝子改造で生み出された人間が活躍する話で、かたやジントとラフィール、かたやソズとジェイブリオルの異種族間の恋の組み合わせ。これを同じにカウントしたんだろうと考えたのですが・・>帯。
  《星界の紋章》を思い浮かべると、絵が流れるようにストーリーをなぞってい き(アニメは3話分しか見てないのに)、対して《スコーリア》は、人物が登場 したところで、場面が静止しクローズアップされて細かな説明が加えられていくといった感じでしょうか。こちらのほうが心理描写細かいですね。
  《星界の紋章》は少年少女の冒険物語でそこに初恋がプラスされている。《スコーリア》は大人の恋(^^;。自分に苦悩しながらもそれを乗り越えていくたくましさがあるような気がします。
  世界の描写やそこに住む(普通の)人々の感情とか生活なども《スコーリア》 のほうがていねいに書かれているので物語に厚みを加えてると思います。*だからって、《星界の紋章》がどうこうということはなくて、それはそれで痛快でい
 いのです。
  科学的設定とか違うんだということは何となく分かるのですが、それをどこがどうといわれるとちょっと弱い・・・(^^;。 
[雀部]   《星界の紋章》は、いわゆる超技術に、もっともらしい説明をつける手間は省いてますからね。これは作者のスタンスの違いですから、どちらが好ましいとか は言えないですけど。
 他に似ているところというと、どちらも女性上位というのは似ていませんか?
 ジント君もジェイブリオルも、それなりに逞しいとは思うのですが、女性陣の圧倒的存在感の前に立つと影が薄いというか(笑)
[みさと]  むふ(^^)。男性陣、かわゆくてよいですよ〜(^^;)。
 おっしゃるとおり、みごとなまでの女性上位ですね。
『稲妻よ、聖なる星を目指せ!』

キャサリン・アサロ著
中原尚哉訳
ISBN4-15-011305-X C0197
 

ハヤカワ文庫SF 880円 2000年3月31日刊
粗筋:(by みさと)
  舞台の始まりは地球、1987年アメリカ連合国ロサンジェルス。マヤ族の血を引く女の子ティナの一人語り。GIRL MEAT A BOY. 1巻とはまた別の恋物語。
   アップロード・ダウンロード・システムにアクセス、なんていう言葉が恋の告白に使われているのに何の不自然さもない不思議、奇妙な心地よさ。前作のソズよりももっとサイボーグなオルソーとティナの出会いは運命である。
   下町で隠れるように暮らしていたティナが自らの力を知らないままオルソーに触発され、危機に出会い、力を発揮して冒険(戦い)の旅路へと歩み出す。
  彼女の力はマヤ族直径の力からきていた。スコーリア王国の元となったレイリコン人との遺伝的なつながりも明らかになる。マヤ文明とのつながりもまた同様に。
   ローン系サイオン同士の結びつきの様子などの描写にわくわくさせられる。

 
[雀部]  ローン系サイオン同士だと、心の深いところ(魂のレベル)までお互いに引かれあうと同時に、分かり合えるという設定なんですが、それってちょっと鬱陶しくありませんか(笑)
[みさと]  うーん、どうだろう。真実の「愛」ならそれも気にならないのでは。けんかも薬味ということでよろしいのではないかと、たとえそのけんかが相手の思いをよんだ瞬間に始まったとしても(^^;。
 「恋」って、『あなたの考えていることがわかる。感じていることがわかる。思っていることがわかる(ような気がする)。 だからもっとあなたのことを知りたい』という面がないでしょうか。『恋は誤解から生じる』という逆説はさておき^^;。
  だから、「分かる」って、「分かられた」ほうからすると鬱陶しいかもしれませんが、「分かりたい」側からすると望んでんで止まないことでして。
  ん? ということは雀部さんは分かられたら鬱陶しいんだあ。そうかあ。
  これは人による違いでしょうか、それとも性別によるものなのでしょうか。私など、分かって欲しい、というか、この人は私を「分かってくれている」と思える人にはのめりこみましたからねえ(^^;。そして私も「あなたを知りたい、分かり合いたい」・・・と。
  しかしローン系サイオンと違って誤解だらけの人間の悲しさ、ずれからのトラブルで破滅した恋はいずこへ・・・っていう屈折した過去はそれはそれとして (^^;
[雀部]  そう突っ込まれると弱いんです〜。お互いが理解し合って、しかもお互いに高めあっていける関係というのは、確かに理想なんですが、何十年もそれを続けられるかというと・・・自信がありませんなぁ(爆)
[みさと]  瞬時分かり合える「魂のレベル」というのは憧れなんですよぉ(^^)
 マンガ「エースをねらえ」(ちょっと古いですが)で、宗像コーチの独白に 魂の底まで思える相手に巡り逢えてよかった」という科白(記憶が不正確なのでちょっと違うかもしれませんが)があって、この究極進化が、ローン系サイオン同士にも思えて、夢見る乙女心(どこがぁ^^;)をくすぐります。
 極上の恋物語。
[雀部]  「エース」は、テニスを介在とした恋愛もので、例えば「アラベスク」は、 バレエがテーマですよね。お互いに追い求めるモノが同じ同士だから分かり合えるってのは、あると思います。で、《スコーリア戦史》は、何でしょうね?
 戦争だったりして(笑)引かれあうように宿命づけられた二人というのは、赤い糸の例えにも似て、なんかとも古めかしいようにも思えますね。
[みさと]  1作目がロミジュリとしたら、2作目は途中まではシンデレラ(^^;)@普通の女の子が王子様と知り合って結ばれるのだから(笑)
 古典的な女の子は何も知らないお姫様。だから王子様に「守られている」。現代(《スコーリア》)の女性は共に闘う。王子様が隠していることだってさっと見つけて(「分かって」)逆に相手を守るのです。
  守るといえば3作目のソズもとらわれの王子様を助けにいっているし、強く 優しくまさに理想ですね。(^^)
[雀部]   桐野夏生さんの『ファイヤーボール・ブルース』の後書きに"女にも荒ぶる魂はある"と書いてあったので、思わずウンウンと頷いてしまったんですが、他にも柴田よしきさんの《RIKO》シリーズなど、日本にも強い女性を主人公とした物語が増えてきたように思えます。こういう分野では極めて保守的だったSFでも《オナー・ハリントン》シリーズ等戦う女性ものも出現し、ジェンダーのありよ うが変化しつつあるようにも見えますね。 
[みさと]  もうずいぶん以前から、少女マンガにおいては「強い女性を主人公とした物語」 がありましたね。SFがらみでいうと「超少女明日香」「ブルー・ソネッ ト」など。
  これは女性読者を対象としていた分、より先んじていたのかもしれません。
[雀部]  そういや、「スケ番刑事」ってのもありましたね(笑)

 
 
『制覇せよ、光輝の海を!』

キャサリン・アサロ著

中原尚哉訳
上:ISBN4-15-011322-X C0197
下:ISBN4-15-011323-8 C0197
 

ハヤカワ文庫SF 各800円 2000年8月31日刊
粗筋:(by みさと)
 それぞれの世界での第1王位継承者であったにもかかわらず、もしくはだからこそというべきか、恋の逃避行(亡命)を選択したソズとジェイブリオル。
  未知の惑星で二人の生活が始まる。子どもと共に築くローン系共同体の生活も星間戦争の波に洗われる。
  ソズとジェイブリオルの(偽装の)死後、スコーリア王クージとユーブ皇帝 はそれぞれの後継者問題に悩みつつもその対立は深まる一方である。そしてこの二人の相討ち。混乱を重ねる銀河。ソズとジェイブリオルの生きていることも一部の知るところとなり、ジェイブリオルはユーブ帝国にさらわれ傀儡皇帝にさせられる。
   スコーリアに帰還し王に就き復讐と夫を取り戻そうとユーブ帝国に突入するソズ。この切れ味がかっこいいのだ。誰が向かってこようと愛するもののためなら・・・・。 
[雀部]   まあ色々ありまして、結局は夫君のジェイブリオルを拉致され兄を殺されたソズが、怒り心頭に発して、自ら指揮を執り戦闘に赴くのです。う〜ん、格好良いぞ、惚れちゃうなぁ。
  だいたい若いSFファンというのは、強くて美しいお姉さまに憧れますよね。
[みさと]  強くて美しいお姉さま、うん、気持良いですよねえ。ばったばったと動き回り周りを巻き込み、なれない自分だからこそ、あこがれます。
  同化して感情移入してしまうんだけど、あまりに自分と違いすぎるソズだから、そのとき(読んでるとき)はいいんだけれど、あとでどっと疲れが・・・(^^;)。
[雀部]  疲れますか?私は気分爽快です(^_^ゞポリポリ
  やはりスペオペにはハッピーエンドが似合う(笑)
  第三巻で、他にはどういうところがお気に召しましたでしょうか。
[みさと]   ユーブ貴族の生活が細かにかかれてますます世界に説得力がついて、それで。それで、どうなるのぉ〜、と、ページを繰る手がさらに早まる。ジェイブリオルの血を引く二つの王国の継承者、ジェイ(=ジェイブリオル3世)のこれからも気にかかります。
[雀部]  ユーブ貴族にも変化が生じてきているようで、今後が楽しみですね。果たして和平はあるのかとかも。
  最後に、女性SFファンにとって、色々書き込まれているガジェットとか、疑似科学技術の描写はどう受け取られますか?ちょっと鬱陶しいでしょうか、それともおおやってるなぁと感心するとか、あるいは無視しちゃうとか(笑)
[みさと]  実はそういうの好きなんです。分からないなりに仕組みを想像したりして、感心しながら読みます。
 再読する本というのは、そんな設定が細かく書き込まれているもののほうが多いです。1回目はストーリー中心(とりあえず色々は薬味程度にして)、2回目は、ガジェット部分をていねいに。3回目にもう一度両方を合わせて味読するという・・。
 とはいっても、あまり難しいと飛ばしてしまって、飛ばしながら、この部分が理解できたらもっとおもしろいだろうに、悔しくなったりしますね。
ttaniさんとのレビュー みさとさんとのレビュー 別所さんとのレビュー
[雀部]
48歳、歯科医、SF者、ハードSF研所員
ホームページは、http://www.sasabe.com
[みさと]
 手近な本なら何でもの乱読派。雑学大好き。あれこれ手を出し実らず(;_;)。
 気に入りの作家を追いかけ全集やらシリーズやらに埋もれる。 
 ホームページは、http://www.ne.jp/asahi/passage/misato/

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