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5. ビッグバン Big Bang

白田英雄

第3回でふれましたように、宇宙は膨張しつづけています。
ということは、時間を逆にたどっていくとどうなるでしょう。
宇宙はどんどん縮んでいって、やがて一点に集まってしまいます。この点から宇宙が生じたときのことをビッグバンと呼んでいます。
元々のアイディアは、ロシア生まれのアメリカの科学者ガモフ George Gamow (1904 - 1968) の火の玉宇宙にはじまります。
ガモフは、太陽の中心での元素の生成にヒントを得て、宇宙の最初が十分に高温で圧縮された世界であれば、宇宙の元素が合成できるのではないかと考えました。つまり、太陽の中心は高温・高密度で、水素が核融合してヘリウムになるなど、軽い元素から順に重い元素が作られていきますが、これと同じような現象が宇宙のはじまりでも起ったのではないかと考えたのです。
宇宙のはじめに爆発があった、ということを揶揄されて、ビッグバン理論と呼ばれるようになりましたが、これによってガモフは宇宙の背景放射を予言しました。
発表された当時としては突拍子もない理論でしたし、後に火の玉宇宙では重元素を合成するには十分ではないということがわかり、ビッグバン理論は一度は忘れさられたのですが、前回に説明しました宇宙の背景放射が発見されることによってにわかに脚光を浴びることとなります。
重元素の合成の説明では失敗しましたが、ビッグバンの瞬間には宇宙に存在する4つの力がすべて統一されていたということが最近の研究でわかってきています。(4つの力については以前の連載である「プサイにファイ」の18回から21回をごらんください。) 4つの力の統一の場としてのビッグバンが最近は話題になります。

このビッグバン、数学的には難物だったりします。ビッグバンの瞬間には1点に集中していたことになるのですが、実は1点に空間や時間が集中すると、物理学は破綻してしまうのです。これは特異点問題といって、ブラックホールの中心に対しても同じことが言えます。ホーキング Stephen William Hawking (1942 - ) は虚数の時間を使うことで、この困難を回避しようとしていますが、まだ完全に解決されたとは言えません。
宇宙論はビッグバン宇宙論と定常宇宙論の戦いの場であったといえます。定常宇宙論とは、ホイル Sir Fred Hoyle (1915 - 2001) らによって提唱された理論で、宇宙に始まりも終りもなく、宇宙の密度は変化しないという理論です。宇宙で常に新しい物質が生成され、宇宙のすきまを埋めているのだといいます。
今の宇宙論ではビッグバン宇宙論に有利な証拠が多く、多数の科学者はビッグバン宇宙論を支持しています。

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