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Sugar Room Babies

第六章〜Phase III (A)

中条卓

   

A: ホムンクルス
「見なさい、これが世界だ」
 魔術師は骨ばった両手を、目に見えない髑髏を支えるかのように胸の前にかざした。向き合う掌に挟まれた空間に漆黒の闇が生じ、そこに回転する青い球体が出現した。やがて球体は透き通り、目をつぶり背中を丸めた胎児の姿を明らかにする。
「あれはまだ生まれておらん。もう長いことずっと夢を見続けているのだ」
「人間の姿をしていますが」
「そうだ、真の人間はやがて大地から萌え出で、まだ見ぬ天を目指すだろう」
 謎めいた魔術師の言葉を上の空で聞きながら、弟子は球体の中を覗き込んだ。
(卵の中の小人か…なんて脆そうなのだろう)
 そうだこいつはお前が守ってやらねばならん、そう叫ぶと魔術師は青い球体を弟子の胸に投げ入れた。

 魔術師の弟子はたくさんの子を成し、その子孫は世界中に広がった。彼らはいつしか自分たちの胸にこの星を受け継いでいることを忘れてしまったが、眠り続ける子供は確実に成長しながら静かに時が来るのを待っている。

   

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