■ブックレビュー
『砂漠の王国とクローンの少年』
ナンシー・ファーマー著
「オピウム国」または「夢の国」と呼ばれるその場所では、ケシが栽培され、脳にコンピュータ・チップをうめこまれて意志を奪われた労働者たちが、その作業にあたっていた。王国の支配者エル・パトロンは、クローン人間の臓器を使い140年以上の年月を生きているのだ。
エル・パトロンのクローンであるマット・アラクランは、6歳になるまで隔離されて育てられるが、ある時、子供たちに見つかり、エル・パトロンの邸宅へと連れていかれる。大人たちは彼を動物のようにあつかうが、支配者自身のクローンであることを悟るや、うわべだけの敬意で彼に接しはじめる。そんな中でマットを真に愛したのは、彼を育てたコックと、ひとりのボディ・ガードだけだった。
とびっきりの悪人のクローンが主人公という、考えてみればとんでもない設定を活かしつつ、その境遇や心情に迫った児童文学の傑作です。今回はこの本を読むと共に、著者に関するあれやこれやを、英語に強い栄村さんにお聞きしました。。
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