《基本シナリオ》
2006年元旦。グリニッチ標準07時。雲は北半球の4分の3を覆い隠していた。分厚い塵埃に遮られて太陽の光はほとんど下界にはとどかない。百億ヘクタールの森林をなめつくした同時多発的大火災はいまだに鎮火してはいないがその勢いは衰えつつあった。一週間というのは森林火災の鎮火時間としては異例に短い。降り続く雨と雪のためもあるが、あまりにも大規模であったためにもはや燃えるべき森が残っていないのだ。鉛色の雲は東へ南へと拡大をつづける。極東を越え、広大な北大平洋を完全に包み込み、北米大陸が闇に沈むのも間近だ。陽光を遮断された地表の気温は着実に下がっていく。>>
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