《基本シナリオ》
この夜、沖縄基地からの最終避難グループを載せて飛び立った米軍輸送機は機体上空、右から左に急速に動く眩い火球を目撃した。それは数秒のうちに西の水平線に見えなくなり、つぎの瞬間、海の彼方に不意に太陽が出現した。直視すれば失明をまぬがれない鋭い輝きが冬の夜空を真昼の青さに変え、ついいましがた彗星の欠片が天空いっぱいにひいた壮大な水蒸気とダストの尾をくっきりと映しだした。つぎの瞬間、我に返ったパイロットが緊急回避動作に入る前に頭上からの衝撃波が両翼を引きちぎり、輸送機はきりもみしつつ波立ち騒ぐ海面に激突した。その飛沫を照らしながらゆっくりと光は白から黄色へと光量を減じ、かりそめの黄昏の空には巨大なキノコ雲が見る見る上空へ立ち上がっていった。その雲頂を超えて淡い逆円錐形の光のベールがふたたび戻ってきた星空に広がり、花火にも似たきらめく微細な輝きが対流圏を超えて伸び上がるその縁を飾っていた。>>
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